結局のところ

「ンあ…ちょ、待っ」

突然の口付けに霖音の酔いはサァーッと引いていった

「霖音…」
「く、苦しい、息が」

しかし完全には冷め切らないもの
酒の余韻もあって霖音の体調はまだ回復しきっていなかった

「くろう、ま…る」

霖音は必死に黒羽丸に止めてもらうように縋るも黒羽丸本人は全く霖音の状態を把握できておらず、雀の涙ならぬ雀の声は全く意味を成さなかった

「霖音、俺は、俺は…」
「な…に?」

ふいに動きが止まった黒羽丸に霖音はここぞとばかりに両肩を押し返し距離をとるも、俯いている彼に気付いている様子はない

「っ霖音!…すまない、今日はもう寝る」

心配になって顔を覗き込もうとすれば、バッと立ち上がりダッシュで部屋を出て行ってしまった
一人残された霖音はこの状況についていけないまま暫くの間、ポカンと呆けていた





「変な黒羽丸」

そのまま夜が更け何時の間にか皆が動き出す時間帯

霖音は昨日の彼を不思議に思いながら朝餉をとりに居間に向かった
当然そこにはいつも一緒に高校に行ってくれる黒羽丸がいるのだが目が合った刹那あからさまに視線を逸らされてしまった

ますます意味が分からなくなった霖音はモヤモヤした気持ちを持つ反面、ワケも分からずにそういった態度をとられることに苛立ちを感じ始めていた

「いただきまーす」

だが決してソレを口に出さないように霖音は平静を装った





「………」
「………」

しかし二人きりになれば現実というものは嫌でも突き刺さる

登校中の空気は凍り付いているかのようにぎこちなく、休み時間になれば何時も傍に来ていた黒羽丸も今日は来なさそうだと思えば、来るだけは来てだんまり…二人は瞬きさえ困難なブリザードの世界にいた

「(なんだこれ)」

声に出さずとも霖音は呆れ果て、

「(昼休みなのに…重い。外の空気でも吸いに行こうかな)」

特に何か声をかけるでもなく席を立って中庭に出た
当然黒羽丸も無言で霖音に付いてくる、護衛の役目は果たそうとしているらしい

「……はぁ」

ビクッッ

こっそり出したはずの溜息だったがどうやら聞こえてしまったようで、逆にコチラ側が驚いてしまうほど黒羽丸は肩を揺らしていた

「(……気まずい)」



裏を期待していた方、申し訳ありませんorz
長男は奥手そうだという独断と偏見で暫くの間はキス止まりです!
のんびり焦らしていきたいと思います(^^;)

20120118









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