お迎えの鴉
「ねぇ、カラスー」
「はい何でしょう」
「にじ…みえないね」
「………」
霖音は残念そうにブスッと顔を歪めた。カラスはと言うと冷や汗をたらりと流していた。
「いったんおろして」
「わかりました」
仕方ないと言えばいいのかカラスは地上に人が居ないことを確認してからそっと降りた。
そこは利用者の少ない公園のようで、奴良家に来てからというもの一度たりとも外出していなかった霖音には一見仕様もない遊具でもワクワクさせられるものだった。
「ワタシここであそぶ」
「は?」
「カラスはかえっててもいいよ。ワタシちゃんとおうちにかえるから、ねっ?」
霖音は小首を傾けて可愛らしく微笑んだ。だが真面目なお目付役にはその手は通じない。
「霖音様、すぐ屋敷に戻りましょう」
「やだぁ、ここであそびたいのー!カラスさきにかえっててよぉ」
「ダメですよ霖音様っ!」
「やだやだやだぁ」
今までに何回か霖音が愚図ったことはあったが今回はまた一段と頑固だった。
「ワタシつよいからだいじょうぶなのぉ」
「しかし霖音様、」
「すこしでいいからひとりであそばせてー」
ワンワンと泣き叫ぶものだから鴉天狗は折れて霖音を一人公園に残して離れていった。
「少しだけですよ、直ぐに迎えに来ますからね!」
「はーい」
***
「まったく…リクオ様と同じく霖音様にも困ったものだ」
リクオと霖音が姉弟…というのも満更でないように感じられた。それ程までに二人は似ていたのだ。
「カラスぅ!霖音は?」
「遊びに行かれてます」
屋敷に帰ってから暫く経って、霖音を捜してリクオが鴉天狗のもとを訪れた。
しかし霖音は今頃一人で公園を満喫しているはず…そろそろ迎えに行こうか。
「黒羽丸、いるか?」
「…ここに」
「霖音様を迎えに行ってほしい。此方は少し用事ができた」
「わかった」
文句一つ垂らすことなく父親似の長男、黒羽丸は父の言う公園に霖音を迎えに向かった。
「あれ?カラスじゃない。キミはだれぇ?」
「俺は黒羽丸だ。鴉天狗の息子、三羽鴉の長男」
「ふーん…」
ジーッと黒羽丸を見ていたかと思うと霖音は別段、興味ないかのようにフイッと顔を背けた。
会って早々嫌われたか、と黒羽丸は苦笑いをしたがそうでもないらしい。
「カラスより断然かっこいーね♪」
ニコッと子供らしい純真な笑みで手を引かれた。
うーん…
とりあえずやっと出番^^;
鴉天狗の用事って何なんだろうね(笑)←
20111007
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