これが日常です
「では此より霖音を正式に本家に迎え、加えて、この地の土地神とする」
「あとボクのおねえさんになってね」
ぬらりひょんというモノはなんとも身勝手な妖怪である、と今更のことだが霖音はしみじみ思った。
「ねえさん、きょうはなにしようか?」
「なにがしたい?」
「イタズラ」
「………」
小悪党な。
ニパッと笑う姿はまさに天使のようだが、心の内は完全に黒い悪魔だった。
「じゃあオトシアナでもほろうか…」
「うんっ!だれがおちるかな…つらら、くろ、あお…それともくびなしかな?」
「ワタシはくろあたりだとおもうなっ」
自分たちよりも何年も生きている妖怪たちが、こんな子どもの落とし穴に引っかかるとは思えないが…楽しそうにするリクオに霖音はあえて何も言わなかった。
***
「ぐすッ…ぐすッ…ぐす…」
ただ餌を仕掛けても、獲物が近寄らなければソレは意味をなさない。
「あれは、…若?」
丁度縁側を通ったのは霖音が予想した黒田坊だった。
「どうしましたっ?若?」
「うぅ…えっ…ぐ、う…」
「若?どうされました?今其方に向かいますからっ」
バカだ。
真面目なヤツほど面白いモノはない、と霖音は純粋に笑いを堪えて桜の木に隠れて見ていた。
「ひッぐ…」
尚も泣き真似するリクオ。
それはもうかなりの演技派と見受けられる…。
「ぎゃぁぁぁぁ」
途端、庭いっぱいに響く黒田坊の叫び声。あぁ落ちたなアイツ…と空笑いした。
なんたって霖音が底の底というところまで掘り下げたのだから…
「ぎゃぁぁぁぁ…」
なかなか底に着かないらしく声は微弱になりながらも暫く続いた。
リクオはケラケラ笑って霖音は呆れて額に片手を付けうなだれた。
「リークーオーさーまぁ」
たとえ穴の中から小さな叫びが聞こえて来ても、二人は何もせずに其処から立ち去った。
なかなか、肝心の黒羽丸が出てこない件について……
さてどうしよう←
20110930
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