月夜の秘め事
月も闇夜に映える頃、バサバサと羽ばたきの音が聞こえてきた
「霖音様、やるべきことは分かっていますね?」
「うーん…まぁ」
「大丈夫です!きっと万事、上手くいきますよ」
霖音は毛倡妓に乗せられた感を否められないままに、気付けばソレは既に始められていた
「では私たちは先に行きますね。霖音様はしっかりと合図を待っていて下さい」
「うん」
だが二人がその計画のために部屋を出て暫く経ってもその合図≠ニやらが来る気配は感じられない
これは一体どうしたものか……
スッ
「義姉さんいるか?」
ボーっと暇を持て余していれば、義弟のリクオの姿が見えた
「どうしたの?」
襖に手をかけたままのリクオと目が合うとバッと目を見開かれた
「おいおい義姉さん…此処には男の妖怪が沢山いるんだぜ。いくら本家だからって、そんな格好してちゃ危ねぇよ」
綺麗に施されたお化粧にギリギリ見えないように着崩された夜着
ほぼ毛倡妓仕様だ
一般にこの格好で出歩けば危ないことは誰にだって目に見えて判るが、霖音はそういうことに他よりも少し疎かったために気付くことはなかった
「ホラ、ちゃんと直せ」
リクオは霖音の前にしゃがみ込んで、乱れた夜着の合わせ目に手をかけてパパッと正してくれた
「義姉さんと黒羽丸の仲は認めちゃいるが、まだそういう事は認めてねぇからな。まだまだ俺だけの義姉さんでいてくれよ」
霖音は確かに耳を傾けていたが、なんとも不思議なことを言われた気分だった
その後、リクオは少し話して直ぐに部屋へ帰っていき、毛倡妓と氷麗の合図を待てども一向になく…いつしか睡魔に襲われ始めた霖音は呆気なく眠りに誘われた
スッ
「すまない遅れた!霖音が呼んでいると聞いたのだ、が…」
霖音が瞼を閉じた後に訪れたのは黒羽丸だった
本来これからが毛倡妓と氷麗の計画だったのだろうが…如何せん、霖音はこの通りぐっすり夢の中にいた
どんな脚本も主役がいなければ上手く進むことはない
「なんだ、霖音…もう寝たのか…そうか…」
せっかく呼ばれたと言うのに黒羽丸は報告に長引いてなかなか来れず、残念な気持ち一杯で自室に戻ろうとした
「ン…くろ…ま、る…」
「っ、霖音」
予想だにしていなかったこともあってか、寝言で名前を呼ばれたことについ反応してしまい、霖音への愛故のか細い理性の糸は悲鳴をあげた
「霖音…悪い……」
二人きりの密室の中、寝言で愛しい妻に自分の名を紡がれれば…いくら堅物だ、生真面目だと言われる黒羽丸でもその糸はプツリと簡単にこと切れた
「霖音…」
寝ころんでいる霖音を起こさないように静かに跨り、そっと顔を近づけて優しく唇を合わせた
「昨日はどうでした?」
「え、何がです?」
「「………」」
あぁ、何も無かったんだと毛倡妓と氷麗は肩を下げた
リクオのは完全に家族愛!
大事なお義姉さんです
で、うん。黒羽丸は独占欲強いといいよ♪(笑)
その内キャラ崩壊します←
20110927
20120118 改
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