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#魔法少女まどか☆マギカパロ



 魔法というものを、使ってみたい気持ちがなかったわけではない。あんなふうに魔女と戦う先輩の姿を見て、純粋に、かっこいい、そう思った。でもわかっている。憧れだけでなれるものではないと。それに、俺には肝心の願いがない。命をかけて戦うことと引き換えにするだけの願いが。比べてデリックの奴は、はっきりとした願いを持っている。他人の願いとも言えるけれど、その人の幸せを望んでいるあいつらしい願いだとも思う。俺はそんな友達を前にしてどうすればいいかわからなかった。いつもこうだ。どうしてだろう。答えは簡単だ。臆病な俺は今を壊したくない。幸せな今を。
 はぁ、盛大な溜息をついてベッドに深く身体を沈める。そんな俺を癒すかのように、猫が甘えるみたいな仕草で臨也が絡みついてきた。もともとこいつに出会ったことによって、魔法だの魔女だのというわけのわからない世界へと足を踏み入れることになったのだ。まぁ別に、だからといって俺が臨也を憎んだり恨んだりしているわけではないけれど。くすぐったさに身を捩ると、シズちゃん、名前を呼んで抱きついてくる。ふわふわとした感覚。けれど、人間とは思えないほどに冷たい掌。するり、俺の頬を撫でた。

「シズちゃんには、叶えたい願いがないの?」
「……んー……、なんていうか……現状に満足しちまってるからなぁ、俺は……」
「そっか、」

 ぽつり、残念そうに呟いて天井へと視線をやる。臨也が言うには、願いを決めて契約さえすれば俺にも魔法が使えるようになるらしいのだが。なんせ俺にはその願いが何だかはっきりとわかっていないものだから、簡単に契約ができないという状況なのである。しかし、どうして臨也はこんなにも俺にだけしつこく契約を迫るのだろう。シズちゃんには素質があるんだよ、理由を聞いてもそうとしか答えない。本当にそれだけなのか? 考えたところで俺にはわかるはずもないことだが。

「強制することはできないけど……俺は、シズちゃんに契約してほしいな」
「……じゃあ、前向きに考えとく」
「……ほんとう?」

 きらきらと、まるで子供のように瞳を輝かせ、臨也が俺の顔を覗き込んでくる。楽しみだなぁ、楽しみだなぁ、うわごとのように呟く様子はどこか狂気じみていたように感じられたが、それすらも今の俺には微笑ましく映る。早く願いを決めて、臨也と契約して、先輩やデリックと一緒に魔女と戦うんだ。目を瞑りそんな未来を思い描きながら、額に柔らかな感触が押し当てられたのに、ぼんやりと臨也を見つめる。

「早く、シズちゃんが俺のものになりますように」



(110213)





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