ディアブラザー | ナノ




#弟×兄
#臨也が病んでる




 帰宅して、夕飯を食べて、適当にテレビ番組を眺めて、風呂に入って。布団に潜り込んでみてもどうにも眠れなくて、カチカチと動きをやめない時計の針にふと目をやる。深夜一時。もうすっかり夜も更けた頃だ。外は静かで、車が走る音も聞こえない。
 そのまま上体を起こして台所に向かい、コップに注いだ水をゆっくりと口に含む。喉の奥をひやりと通過していく感覚に完全に脳が覚醒してしまった。
 がちゃ。控えめに玄関の扉が開く音がして、心臓が奥底で疼くのを実感する。こちらに背を向け、座り込んで靴を脱いでいる愛しい兄さんの姿。俺より大きいはずなのに、どこか頼りなくてちっぽけで、そんな兄さんが昔から好きで好きでたまらなかった。
 高校卒業と同時に家を出て都会で一人暮らしを始めた兄さんをわざわざ追いかけ、一緒に暮らそうと持ちかけたのも俺。家のことは全部やるし、お金のことだって心配いらない、兄さんは俺のそばにいてくれるだけでいいんだよ。そうしてようやく念願の兄さんとの生活が始まったというのに、変なところで真面目な兄さんは毎日よくわからない仕事をしに出かけていく。
 どうして俺のそばにいてくれないの。兄さん、こんなにも俺は兄さんが好きなのに、ねえ兄さん。

「おかえり、遅かったね」
「……! 起きてたのか、」
「……やっぱり、ひとりじゃ寝れないよ。俺、兄さんがいないとだめみたい」

 ぎゅっと後ろから抱きしめた体はひどく冷えていて、俺の体温を分けてあげたいとさえ思った。可哀想な兄さん。こんな夜遅くまで働かされて、それでもわずかなお給料しか手元には入ってこないなんて。
 仕事、やめなよ。何度もそういった。でも兄さんはその度に少しだけ笑って、お前に迷惑かけたくないから、呪文のように繰り返す。そんなこと言わないでよ。兄さんのこと、迷惑に思ったことなんて一度もないのに。
 だって俺は兄さんが大好きなんだ、愛してるんだ。兄さんさえいれば他には何もいらない兄さんが俺のすべてだ兄さん兄さん兄さん。

「……臨也、俺……」
「……やめて」
「…………」
「知ってるでしょ? 俺が兄さんなしでは生きられないって、知ってるでしょ? それなのにどうしてそんなにも残酷なことを言うの? ねえ!」

 感情が爆発しそうになる。兄さんは罪な人だ。俺に愛されるのが嫌なの。俺のことが嫌いなの。違うよねそんなわけないよね。俺が兄さんを愛するように兄さんも俺を愛しているんだよね。兄さん、いや、……シズちゃん。俺を見て俺だけをその瞳に映して。他の男を見る瞳なんていらない。他の男の名を呼ぶ口なんていらない。シズちゃんは俺の、俺だけのもの。

「……ごめんね。別に怒ったわけじゃないんだ。怖がらないでいいよ。シズちゃん……」
「……臨也……」
「ベッド、行こうか。ずっと待ってたんだ」

 震える手をそっと握りしめて手の甲にやさしく唇を落とす。兄さん、兄さんは俺のお姫様なんだ。だから大切に大切に愛でてあげる。もし逃げようなんて考えたらそのときは俺の手で、



(110203)





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