永遠に片想い | ナノ




#臨也がペドフィリア



 もしかしたら俺は、ずっと昔から臨也のことが好きだったのかもしれない。だから嫌われても嫌われても、諦めずに傍にいようとする。この想いが報われる日なんて決して訪れることはないのに。それでもこの先もずっと、俺が好きであり続けるのは臨也だけなのだ。ああ、なんて愚かで不毛な恋。

「はいはい、どちらさま……って、また君か」
「……ごめん」
「……いいよ。上がれば?」

 仕事が終わって真っ先に向かうのはいつもこの場所だった。もうすっかり通い慣れてしまったせいで足が勝手にここまで動いてきてしまう。臨也は相変わらず不機嫌そうな表情。真っ赤に染まった街を見下ろせる事務所に二人きり。会話はまるでない。それもそうだろう。臨也が俺のことを口も利きたくないほど嫌っているなんて百も承知だ。でも、それでも俺にこうして時間を共有する権利を与えてくれる。だから勘違いしてしまう。もしかしたら臨也も、

「シズちゃんさあ、俺に嫌われてるって自覚あるくせに毎日毎日よく来るよね。なに、マゾなの? 気持ち悪い……ていうかさ、セックスしたいんならわざわざ俺のとこ来る必要ないじゃん。君にはたくさんお相手がいるんだろ? 売春してるくらいだもんねえ。ほんと、汚らわしい雌犬だよ……こうやって顔合わせるだけでも不快だっていうのに。感謝してほしいくらいだ。あ、俺これからテレビ見るからさ。もしやりたいんなら勝手にしてくれていいよ。俺は何もしないけどね」

 べらべらと捲し立ててソファにどっかりと腰を下ろす臨也を目で追いつつ、涙腺が弛むのを必死に堪える。泣くな、泣くな。たとえ嫌われていても身体だけは繋がっていられるんだから。泣いたらダメだ。
 ふらふらとした足取りで臨也の脚の間に身体を滑り込ませ、萎えたペニスを取り出して頬張る。俺もフェラチオが下手というわけではないのだが、必死に舌を這わせてもなかなか勃ってくれない。ちら、と上目遣いで臨也に視線を向ければ、ちょうど俺の背後にあるテレビの画面に釘付けになっているのだろう、ひどく口元が緩んでいた。今の時間帯は臨也の大好きな教育番組が放送されているし、無理もない。
 そう、臨也が俺に興味を示さない大きな理由がまさにこれである。彼はいわゆるペドフィリアと呼ばれる特殊な性癖を持っていて、小さな子どもしか性の対象として見れないのだ。だから当然、俺にも勃つことはないわけで。

「ああ、かわいいなあ、あの男の子……ああいう無垢で汚れのない子どもをぐちゃぐちゃのどろどろに犯してやれたら、さぞかし気持ちいいんだろうな……」
「ん、んうっ、はふ、いざや、も、いれていい……?」
「え?だから勝手にしなって。今俺こっちに集中してるの。邪魔しないでよ」
「ご、めんなさ……っ……」

 画面の中の子どもに反応したのだろうか、僅かに熱をもって勃ち上がった臨也のペニスを解放し、自分のスラックスと下着を下ろして湿らせた指でアナルを慣らす。多くの男を受け入れてきたそこは早くも収縮をはじめ、目の前の肉棒を求めて疼きだした。我慢なんてできない。一秒でも早く臨也と繋がりたい。
 はやる気持ちを抑えつつ、ふかふかとしたソファに手をつき、臨也の勃起したペニスを後孔に宛がってゆっくりと体重をかけていく。あ、ああ、熱い。臨也が俺の中に入っている、それだけで興奮してしまって。腰をゆらゆらと揺らし、昂ったものが前立腺を掠めるたびに悲鳴を上げる。好きな人と繋がっている幸せに涙がこぼれそうだった。

「ふあ、あ……あっ、ん! いざ、いざやぁ……んうぅ……」
「ちょっと……うるさい。もう少し声抑えてよ。あとあんまり動かないで、見えない」
「っ、く……ん、んふっ……あ、うう!」

 セックスの最中、臨也は絶対に俺と目を合わせてくれない。俺の向こう側にある映像に微笑みかけるだけ。悔しい。悲しい。でもわがままなんて言える立場じゃないから、俺は。おとなしく自分で自分の口を塞ぎ、洩れる声を押し殺す。目の前にいるのに、こんなにも遠い。俺と臨也の距離。いっそ捨ててくれれば楽になれるのに。身体だけの関係なんてやっぱり、虚しいだけだ。

「んあ、あっ、ア……んん、ん、んーっ!」

 絶頂に達して吐精するのもいつも俺だけ。臨也は終始微動だにせず、ぐったりと凭れかかる俺に目もくれない。こんな冷めたやり取りにも慣れてしまったおかげで、ひたすらに無感動な自分がいる。心に風穴が空いたみたいに苦しくて息ができない。それでもこうすることでしか寂しさを埋められない俺は、どうすればいいのかなんてわからなくて。

「ねえ、気が済んだならもう帰ってくれる? いつまでもそこにいられると邪魔だし気色悪いし……迷惑なんだよ」
「っ……ふ、……う……」
「なに、泣いてんの? 聞こえなかった? いい加減にうざいって言ってるんだよ、もう……君にはうんざりだ。早く出てって」

 なあ、臨也。こんなにお前に嫌われても俺はまだ、お前が好きで好きでしょうがないんだ。



(100801)





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