欲望に従え | ナノ




「よく考えてみたらさ、アナルセックスって汚いよね。そもそもセックス自体が汚い行為ではあるんだけどさ。まだ男女間の性交は目的があるからいいよ。でもさあ、男同士のセックスなんてしたところで何も生まれないじゃない。せいぜい一時の快感が得られるくらいでさ。それでも俺はシズちゃんを抱いてるわけなんだけどね。仕方ない。どんな人間だって欲望には打ち勝てないものだから。まあつまりふと疑問を抱いたわけだよ。シズちゃんの汚らしいケツの穴に俺の指をわざわざ突っ込んで慣らしてやるのもどうなんだろうって。確かにちんこ突っ込んだら俺も気持ちよくなれるよ。そこは否定しない。でも指突っ込んだところでシズちゃんはいいかもしれないけど俺はまったく気持ちよくなれない。ね? だからやっぱり俺が指を突っ込む必要はないと思うんだ。というわけで今日は自分で慣らして勝手に挿れてくれるかな。そのくらい簡単でしょ? 跨がって自分から腰振ってよがるような淫乱シズちゃんにはさあ」

 言いなりになるのは癪だ。でもそれ以上にこの身体が自然と快楽を求めて蠢いてしまうのも覆しようのない事実でしかない。結局俺は優雅にリクライニングソファに腰かけた臨也の目の前で、アナルに自分の指を突っ込んでぐちゃぐちゃに掻き回している。正直初めてのことだったが抵抗はなかった。後ろを弄るだけで勃起するのもどうかと思いつつ懸命に指を動かし続ける。だがなかなか普段臨也にやってもらっているようにはいかないもので、さっきからもどかしいところを掠めてばかり。だめだ。とっくに解れてはいたがあと少しのところでイけない。ちらりと臨也を見やると、奴は俺なんて眼中にもない様子で爪を磨く作業に夢中になっていた。細長い指にちょうどよく切り揃えられた爪が映える。あれじゃないと。しばらく訴えるような視線を向けていればおかしそうにくつくつと笑われる。こうなったのも全部あいつのせいだ。

「なあにシズちゃん。そんな顔して。俺の爪でナカ引っ掻いてほしいわけ?」
「んっ、は、やく……っ!」
「もう、しょうがないなあ」

 手首を掴まれ無理矢理ずぷりと引き抜かれるとそこに求めていたものが侵入してきた。あ、あ、と断続的に喘ぐ俺を容赦なく臨也の爪が攻め立てる。すでに把握された前立腺を的確に引っ掻かれ、呆気なく腹の上に精液を飛び散らせて俺は達した。そんな痴態を目の当たりにしてすっかり興奮したのか、取り出した臨也のそれも完全に勃ち上がっている。余韻に浸る間もなく、跨がった俺は薄い肩にしがみついてゆっくりと腰を下ろした。じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てながら臨也のペニスを飲み込んでいく。奥まで入ったところで一息、そうしていいところに当たるよう身体を揺らす。どうしようもなく奥が疼いて何もかもどうでもよくなった。頭の中はどろどろで思考が働かない。ときどき形のいい爪が腫れ上がった乳首を引っ掻いたが、もはや僅かな痛みを伴うそれすらも快感でしかない。気持ちいい。もっと欲しい。

「ふ、あっ! ン、は」
「俺のちんこおいしそうに咥えこんじゃってやらしいな……ね、気持ちいい?」
「、きもち、い……ああん!」
「ふふ、そうやって乱れてるときの素直なシズちゃんが一番かわいい」

 ぱんぱんと肉同士が激しくぶつかり合った。臨也も余裕がなくなってきたのか、俺の腰を掴んでだんだんと乱暴に揺さぶり出す。汗ばんだ髪を振り乱しながら俺は必死になって腰を振る。こう毎日のようにセックスに明け暮れるのも相当つらいものがあるが、やはりやめられなかった。臨也とのセックスが気持ちよすぎるのがいけない。嘲る唇も、意地悪な指も、獰猛な爪も、貪欲な身体も。すべてが俺を狂わせる要因でしかない。先端がぐりぐりと奥の方を蹂躙して、飛びそうになる意識を何とか縫いつける。噛みつくようなキス。心行くまで弄ばれる悪戯な舌。きゅっと締めつけてやれば、胎内で脈打ったそれがどくどくと熱いものを注ぎ込み、俺も二度目の吐精を促された。まだくらくらする頭を引き寄せられ、より深く合わせられた唇に呼吸ができない。

「ん、んっ、ふあ」
「シズちゃん、」
「あ、いざや……っ」
「そういうの、他の男の前で見せちゃだめだから」
「……ばか、ありえねえよ」

 挿入されたままの臨也の熱がどくんと質量を増す。緩やかに再開される律動に身を任せる以外の術を俺は知るよしもない。



(100424)





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