低俗なあそび | ナノ




#来神時代



 終業を告げるチャイムが鳴り響く。それまで惰眠を貪っていた俺は顔を上げ欠伸をひとつしたあとまだ眠い目を擦った。携帯を開くとメールが一通。知らないアドレスだ。文面にざっと視線を走らせ理解する。昨日の男か。学校帰りに制服のまま街をぶらぶら歩いてたら声かけられて今晩どう、だっけ。あいにく別の男に誘われてたもんだからアドレスだけ渡してそのままにしてたんだった。まあ今日は特に予定もないしOKしておこう。ホテル代別で3万なら、と打って画面を閉じた。しかしこういったことをするようになってからよく声をかけられるようになったもんだ。そのつもりはないがどうやら俺は男を誘うような雰囲気を纏っているらしい。金がもらえるんなら何でもいいけど。
 さっきまで騒がしかった教室もいつの間にか部活やら何やらでほとんどの生徒がいなくなってしまい今ではとても静かだ。最後の一人も鞄に教科書を詰め込み出ていった。窓の外をぼんやりと眺めていたがふとバイブレータの音に気づき携帯を見ると男から19時に駅前で、と返信がきている。さて、それまでどっかで時間でも潰すとするか。立ち上がった瞬間、誰もいなくなった教室の戸ががらりと音を立てた。

「シズちゃん」
「……臨也」
「今日、これから暇?」

 まるで待ち構えていたかのように声をかけてきたこいつとも何度か関係を持ったことはある。基本的に金を持ってそうな年上の男としか寝ない俺だが臨也だけは別だった。この歳で情報屋とかいう危ない仕事に首を突っ込んでいるこいつはそれなりに金を持っていて、その金の使い道に困っている。臨也は性欲処理がしたいだけ。俺は金が欲しいだけ。互いの利害関係も一致していたから容易に抱かれてやった。結局のところ金さえもらえれば相手なんて誰でもいいんだ。

「先約が入ったからまた今度にしてくれ」
「ちょっと舐めてくれるだけでいいからさ。だめ?」
「……ここでしろってか」
「そーゆーこと」

 財布を取り出しその中から諭吉を一枚。机の上に置かれたそれを見つめながら俺は溜息をついた。あんまり学校ではやりたくねえんだけどな。誰かに見られたら面倒なことになりそうだし。ちら、と臨也を見やると俺の言いたいことは既にわかっているらしく、安心してよと肩を叩いてきた。

「シズちゃんフェラうまいじゃない。たぶん俺すぐにイけると思うからさ」
「……言っとくけど顔にはぶっかけんじゃねえぞ」
「わかってるよー」

 ほんとにわかってんのか。半信半疑になりながらも椅子に腰を下ろした臨也の足の間に身体を滑り込ませ、ベルトを引き抜きジッパーを下げた。取り出した性器の先端から舌を這わせていき大きく口を開いてそれを咥え込む。確かに自分で言うのも何だが経験しているだけあってそれなりにフェラチオには慣れている。最初のうちこそ抵抗があったが今ではそれをすることに何の戸惑いもなくなっているのだからおかしい。届かない場所には指を添わせ丹念に臨也を刺激する。閉じた唇の隙間から僅かに洩れる声を聞けば奴が感じているのだとわかった。うっすらと上目遣いをすると目を瞑って快感に堪えている臨也が見えて。力なく俺の髪を掴み一定のリズムで息を吐き出している。そろそろか。ぶるりと身体を震わせて脈打った肉棒から独特の苦みが放たれる。ザーメンを飲むなんて滅多にやらないことだが今は仕方ない。変なところにぶっかけられたら困るのは俺だ。おとなしく喉を上下させてゆっくりと飲み込み離す。入りきらなかったそれは臨也の指が掬いご丁寧にも俺の口内に突っ込まれた。おい、追加料金とるぞ。

「ふふ、いーながめ」
「とっととしまえ」
「はいはい。もーシズちゃんってばつれないんだからー」

 ティッシュで軽く残滓を拭き取りズボンを持ち上げる臨也を横目に俺も何事もなかったかのような涼しい顔をして立ち上がった。一回家帰ってシャワーだけ浴びるか。放置されたままの諭吉を拾い無造作に制服のポケットに突っ込む。間違えて洗濯しないように気をつけないとな。さて今度こそ帰ろう。鞄を肩にかけ振り向くと臨也がいつものように笑っていた。

「明日いつものホテル予約しとくね。空けといて」
「最低5万な」
「ってことは当然中出しもさせてくれるわけだ」
「……またかよ」
「何かご不満でも?」
「勝手にしやがれ」

 しかしまあ男の中に精子注いだって女みたいに孕むわけじゃあるまいし一体何が楽しいんだか俺にはまったくわからない。



(100405)





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