憐れ仔羊は宙を掻く | ナノ




 シズちゃんが好き。大好き。でも俺の言いなりにならないシズちゃんは嫌い。大嫌い。他の人間と楽しそうに話すシズちゃん。俺以外に笑顔を向けるシズちゃん。気持ち悪い。胃がむかむかする。死ねばいいのにと思う。だけどどんなに殴っても蹴っても刺しても折ってもシズちゃんは死なない。俺に屈してもくれない。ただ射殺すような瞳をまっすぐに向けてくるだけ。ひどいよ。どうしてわかってくれないの。俺はこんなにシズちゃんを愛しているのに。

「はっ、……あ、ん」

 金色の糸をシーツの上にばら撒いていやらしく腰を振るシズちゃんは心も身体もぼろぼろに傷ついている。それでも俺の与える快楽にはとても従順で。昔はあれだけ殺す殺すって馬鹿の一つ覚えみたいにうるさかったのにな。そんな過去が嘘みたいに今は目にいっぱい涙溜めて物欲しそうにこっちを見つめてくるんだから笑っちゃうよね。信じられない。これがあの頑なに俺を拒絶していたシズちゃんだなんて。
 最初はちょっとした実験のつもりで軽い薬を盛ってやったんだっけなあ。そうしたら驚くほど簡単に弱ってくれて苦労することなく拉致できちゃったんだよね。あれからどのくらいの月日が流れたのか俺の記憶も今では曖昧になってしまったけどシズちゃんは大切に監禁して一日中ずっとかわいがってあげている。俺のことが憎くて仕方なかったシズちゃんも今や俺がいないと生きていけない身体になっちゃったってわけ。皮肉な話だよねえ。

「いざや、はやく……っ」
「だーめ」

 ぐちゅぐちゅに濡らした性器をぐいぐい押しつけ辛そうに眉を寄せながらシズちゃんは懇願する。ああ、俺の欲しくてたまらなかったもの。指を後孔に押し込んで内壁を引っ掻いてぐるぐる混ぜ合わせてもまだ全然足りないって顔してる。だらしなく開いた口からあんあんと洩れる喘ぎ声はまるで女みたいだ。ねえ、いつからそんなふうになっちゃったの。白い肩を押さえつけて凝り固まった桃色の乳首に歯を立ててやれば一層高い声が上がる。敏感な肢体はほんの少し触れただけでびりびりと電流が流れたようにびくびく跳ね上がって。とろとろに蕩けた入口がひくついて膨張した熱を早く早くと待ちわびている。

「おねだりは?」
「あっん、や、あ……!」
「俺を満足させてみなよ、ほら。淫乱なシズちゃん」
「やだ、いざ、や……ああっ」

 なかなか素直に折れてくれないところは変わらないなあ。なんて歪んだ笑顔を振り撒いてあっさりと指を引き抜いてやった。すると途端にシズちゃんは絶望の淵に立たされてしまう。ぬるぬるに濡れそぼったアナルが呼吸をするように伸縮しているのがここからはよく見える。恥も外聞もないのかシズちゃんは長い脚を惜し気もなく大きく開いたまま。切なそうに睫毛を伏せて距離をとった俺に官能的な視線を向ける。本当は今すぐぶち込んで壊れるまで犯してやりたいよ。でもそんな簡単にご褒美をあげるのはつまらない。だから俺は息を荒くしながらシズちゃんを見下ろしてにやりと口角を吊り上げる。犯してほしかったらそれ相応の態度で示してみなよ、ってね。

「……あ、」
「言っとくけどオナニーして一人だけ気持ちよくなろうなんて考えは許されないからね」
「っ、いざや……」
「ん、なあに?」
「……い、れて……」
「はあ? そんなので挿れてもらえると思ってんの? 俺のこと馬鹿にしてるでしょ」
「ちがっ……あっ!」

 ばちんと小気味良い音を立ててシズちゃんの綺麗な顔を殴った。そこまで痛みは感じないといっても精神的ダメージを与えるのには都合がいい。赤く腫れた頬が愛しかった。なんてかわいいんだろう。シズちゃんが俺に殴られて泣いている。ぞくぞくと鳥肌が立つほど気持ちよかった。身体を縮こませて歯をがちがちと震わせるシズちゃんは小動物のように愛らしい。ああ、ああ。早く犯したい。

「……言って」
「っ、ふ」
「言えよ」
「……! 、あ、おねが…ちょうだい……お、かして……ぐちゃぐちゃ、にっ……!」
「ふふ……そう、いい子だね……大好きだよ、静雄」

 軽く口づけ限界を迎えていた自身をぐりぐりと一気に奥まで突き刺した。甲高い悲鳴のような嬌声が上がる。ほっそりとした腰を乱暴に掴んで荒々しく揺さぶればシズちゃんは気持ちよすぎて死にそうな顔をしながら呆気なく達した。びゅくびゅくと先端から白濁が飛び散り俺も胎内へとそれを吐き出す。そして深く息を吸って肺を落ち着かせようとしているシズちゃんに追い討ちをかけるよう片脚を担ぎ込んでより奥を貫いた。

「あっ! あ、あっ……」
「俺に犯されて気持ちいい? シズちゃん……」
「ひいっ、ん、んうっ!」
「ほんとう、救いようのない変態だ……、でも」

 酸素を奪うかのように唇を貪って柔らかな舌を歯でやんわりと食む。結合部からはぐぷぐぷと体液が溢れてきて容赦なくシーツを汚すがそんなことは気にならない。今俺たちはひとつになっている。愛し合ってるんだ。なんて幸せなんだろう。焦がれてやまなかった。欲しくて欲しくて。どんなことをしても手に入れたくて。だからもう手放したりしない。逃がしてなんかやらない。それは猛獣の檻の中で飼われる生贄の仔羊にも似ていて。

「セックスやめたらシズちゃん死んじゃうもんね、」

 かわいそうでいとしい。



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