例えば世界一周してみるかい?






地球と星と宇宙と私と君の関係

(つまりは globe)






★".☆".★".☆".★".☆".★".☆".★".














風が髪を揺らせ、鼻を掠る。



さくらは至って自然に目を覚ました。





起き上がると見覚えのある天井ではなくて、高い高い天井で面積が大きく、そして辺りは真っ暗。

別に怖いとは思わなかった。

そして・・・ふと、気がつく。

ここはソファー。

どうして、自分はこんな所にいるのだろうか。

窓の向こうを見れば、やはり暗い。

今の時間を深夜2時ごろと推定する。


そういえば、さくらは、いつもの仲間達と太郎の家に遊びに行って、泊まっていたのだ。

そして、浮かれ疲れたのか、ソファーで眠ってしまったのだ。


経緯を思い出すと、さくらは「ありえない・・・」と呟く。


何故、誰も起こしてくれなかったのだろうか。

普通なら起こしてくれても良いはずだ。それとも、さくらはもう皆から見放されているのだろうか?


どちらにしろ、眠ってしまっていたのは仕方が無い。


少しの窓の隙間から覗かせるキラキラ輝く月や星に歩み寄る。

いや、歩み寄れるはずはないが。


窓は少し開いている。


隙間風――










数分・・

そうしていると、階段を降りてくる、この時間帯にしては妙に軽快な足音がさくらの耳にいやと言うほど届いた。


コンナ時間にコンナ場所。
仲間のうちの誰かだろう、だけど、さくらは動かなかった。

動けなかったのかもしれないが、ただ何となくこの場所から離れたくなかっただけなのだ。



そして、足音は――・・




「どっかの馬鹿だと思ったらお前かよ」

「どっかのジジイかと思ったらアンタですか」


さくらは窓の向こうから視線を変えることなく、後ろにいる彼に間合いをいれず見事言い返すことに成功した。

後頭部に何かが当たった感覚が走る。



ばーか、私は石頭なのですよーだ!



シュウは振り上げた手を擦っている。




「つーか、お前ずっとここに居たわけ?」

「私には友なんていないのさ」


遠まわしにそれは誰も起こしてくれなかったと訴えているわけで


「惨めだな」

「ですね」

「馬鹿?」

「馬鹿だけど馬鹿じゃない」



なんだ、それ・・・と同じように横で真っ黒な空を見上げて、苦笑するシュウを横目で見る。


そう言えば、どうしてシュウが起きているのだろうか。

今更ながら思った。

そして、シュウも本当は私と同じ気持なんじゃないかな、と勝手に決め付けて納得する。



「寝ないのか?」

「生憎、無理だしさ」

「良い子の寝る時間はとっくに過ぎてる」

「わしゃ、良い子じゃないのだすよ」


何人だよ。一瞬そう思ったが会話を変な方向に持って行きたくないので断ち切る。



「悪い子はお仕置きだ。」


さくらは未だシュウを見ようともしない。


「じゃあ、アンタ。思う存分お仕置きされなよ」

「いや、さくらだろ」

「わしゃ、悪い子ではないのだよ」

「じゃあ、今すぐ寝ろ」

「嫌じゃ、ボケ、」

「侮辱罪で訴えるぞ」


そんな会話が5分続く


何故か息の荒い2人。

もはや、誰も起きてこないことが不思議だ。








「光って地球を何秒で走るんだっけ?」


一瞬、話が飛びすぎて、というか一体この場に何の関係があるのか。いや、全くない。

そんな、さくらの言葉にシュウは呆れながらもちゃんと答えるため、すでに言葉を捜し始めている。



「光が地球を一周する速さは、360km/秒 で赤道を通る」

「ふぅん」

「はっ」


首を傾げるさくらを人笑いする。



「じゃあ、1年が365日だから、365日に1日の時間の24時間をかけて8760時間を出したとして、365日から24かけて、それに3600をかけ、3153600時間が出てくる。30万km/秒を300000メートル/秒に直して、365日をかけて、それに24時間をかけて最後に3600kmをかけて、9.46080000000と出るけど四捨五入をして9兆500億kmになるんだよね」



さくらにしては、流暢に語るな・・・と遠く思う。

そろそろ、眠くなってきているのかもしれない。



「な、何言ってんだ・・・」




「だからさ、つまりは光が1年かけて進む距離を1光年と言うのだよね」

「・・・」


まじで、コイツは何が言いたいのだろう。



「ただ、それが長いって思ってしまったのだよ」

「・・・はっ?」

「長いなぁ」

「・・・(こいつ眠らせようかな)」







「光は地球をいつでも飛び交っているし、1年かかって進む距離は9兆500億kmって遥かに長いよね」

「まぁ、地球の周りだから当たり前だろ」

「その当たり前が寂しいんだよねー」



星が揺れた。



「寂しいよ」



月も星も輝いている。




寂しいんだってば




「離れすぎてるよ・・・」


それは当たり前だけど違う場所

違う光。



「寂しいんだよ。わたしゃ今」



1億光年なんてここの生活に比べたら果てしなく長い、遥か銀河の先。

学生生活など、青春と呼ばれる時代はあっという間に、離れて行ってしまう。。

















哀れな彼女を、むしろ自分も付き合わされ、哀れなのだと思うが。無性に言いたくなってしまったのだ。


1億光年だろうが10億光年だろうが、そんなもの一切関係ない。




























「なぁ、好きだ」






やっと、さくらはシュウを見た。













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