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ご 愁 傷 様 で す . . . . . . . 「人を殺したいと思ったことある?」 「ない」 ザーザー ガタガタ ビュービュー バンバンッ...... 夏の風とは全く違う、冷たくて鋭い風が、窓を叩きつけていた。 彼の耳に微かに届いたのは、彼女の声だった。 間髪いれる間もなく返事をした。どうでもいい質問だった。 適当だ、くだらない質問だと思いつつも、相手の退屈そうな顔に向かって、即効返事をした。出来ればもっと、明るい楽しい話は、ないのかと文句を言いたいところだが 生憎、彼にもそんな明るい楽しい気の聞いた話などできやしない。なので仕方がなく黙り込んだ。 「じゃあさゲロ吐くほど嫌いで憎んでいる人は?」 窓を叩きつける風が力を増していく気がして何故か恐怖を感じる。 痛々しく助けを求めるように悲鳴をあげている窓に思わず目を向けてしまう。 窓の向こう側の景色をみて、全身から身震いした。 指先が冷ややかになっていく。 「無視しないでよ」 「人を殺したい」とか「ゲロ吐くほど嫌いで憎んでいる」とか そういう事を何故今この状況で思いつくのか。いや この寒い雨風の強い日に、暗い雰囲気になってしまうのは仕方がないのか。そうなのか。 そんな話をすれば余計、真っ暗になってしまうではないか。 とりあえず、まずは、こいつの汚い言葉を誰か注意してくれ。 彼女も同じように窓を見ていた。揺さぶられ悲鳴を上げる窓に映ったのは、彼女の妙に深刻な顔だった。 なんで自分はここにいるのかと不思議に思ってしまった。 そして 先ほどに質問がそんなにも深刻な顔になってしまうほどに大切なことなのか。理解できなくて というか理解できる人間などこの世に存在などしないのかもしれない。 「あたしは人を殺していいならあたし を殺してる」 「・・・自殺?」 「自殺じゃないよ 人殺し」 ああ どうしてこんなにも愚かな生き物なんだろうか。 この世に生まれた時には既に、人は平等なんかじゃない。 誰かが誰かの命を絶つなんてしてはいけないことなんだと分かっている。分かっているのに 過ちは何度も繰り返されていく。そうだ 自殺なんかじゃないんだよ。自分のこの命だって絶ったらだめなんだって 分かってる。この命は自分のものだけじゃないんだって。 もし人を殺しても許されるなら、真っ先に殺してあげるから、あたし。そして 劣等感が溢れすぎて 周りの目が痛いほどに気になって 自信がなくて この場に立っていること自体にも嫌気がさしてきてしまったのなら もう生きていても死んでいるのと同じで。大嫌いだ 大嫌いだ 大嫌い だ 殺してしまいたい。そして一からやり直して愛すことのできる自分に生まれ変われたらどんなにいいんだろう。あはは 夢を見ているだけのそんな哀しい人生だよ。そうだよ でも仕方ないんだ。被害妄想だとしても自分だけがそう思っていたとしても皆が優しくても違うと言ってくれても この世にただ1人あたしが納得できなければ この思いは一生付き纏ってきてしまうから、 苦しい。 割れてしまいそうなぐらい強い風が、窓を容赦なく叩いた。 「お前、死んでるように生きるなよ」 あ、 もう死んでるのかもね? 私 が 死 ん だ ひ | ・ ・ ・ ねぇ、やっと 殺せたんだよ |