何だったのだろう





あの時の気持ちは



一体何だったんだ






幻想だ





幻だ





全て嘘だったんだ






嗚呼











今日も暑いが毛布を顔まで被って寝ようか
























































えー、ただ今を持ちまして自分やめたいと思いまーす。ええ?心配後無用!私は夢の中で生活するのさ!それじゃあ、皆さん御機嫌よう。私の事忘れんなよ!とくにアンタだよ、アンタ!!








午  
後  ノ
   
   犯










それは、さくらの手の中から転がった。





キラキラと太陽の光に反射する。その光がシュウの目に直撃した。眩しさにシュウは一瞬意識を手放す。
そんな事気にすることなく、さくらは転がったそれを反射的に追いかける。





ころころ

転がるソレ





「うひょひょひょひょひょひょ・・(まてコイツ!)」
「・・・(怖)」
「よし、取れたっ!!」





さくらが落としたのはス○イリーの鏡だ。そして拾い上げたのも当然ながらス○イリーの鏡だった。そう、ス○イリーなのだ。





「さくらって鏡持ってたんだな・・・」
「んん?文句あるのかい?」
「いや、何か不思議だなと」
「それって何か失礼だよね」
「つーか、その鏡趣味悪いだろ」
「シュウに言われたくない」
「は、何で?」




そう聞くと、さくらは顔を顰めた。




「うっさい、バカシュウ」
「・・・(バカ)」





さくらはガサツとまではいかないが、女としての嗜みをかね揃えているわけでもない奴だったのだ。だが、意外な事に彼女は鏡とくしをいつも手にしていた。これにはアインシュタインもアイーンだ!(さぶ・・)





「シュウ、私今日夢見たの」
「どんな?」
「自分じゃない夢」
「は?」
「私は夢の中で自分じゃなかったの」
「・・・どういう意味?」
「私は息をしていなかったの」
「死んでるってことか?」
「何かね、1つの塊になってる感じなのかなー」





鏡を俺の顔に反射しながら、さくらはににへへと笑った。時々思うけどコイツには脳ミソがかね揃えていないんじゃないかと思う。ああ、何とも可哀想な奴だ。同情してあげよう。さくらはまだ、にへへと笑っていた。





「私は夢の中で生きることが出来るのだよ」
「あ、そう」
「シュウにはそんなこと出来ないでしょー!」
「興味ねえし」




ベシっとさくらの頭を叩いて一歩前を早足で歩き出す。さくらと話していると、どうも調子が狂うのだ。それは本人が変人だからなのだろうか。





「夢の世界に一生いたいーよー」
「いっとけ」
「出来るもんならそうしてるよー」





小石を蹴ると高く宙に舞って2,3メートル先の草陰に落ちていった。それを見てさくらが「ぎゃはは」と笑っていた。何が面白いのか俺には全くわからない。いや、分かりたくないです。
サワサワ、と鳴る草を踏んで何でここにいるんだろうか、今さらそう思った。気がつけば、さくらと共に歩いていたのだ。本当、さくらといると気が狂ってしまう。






(夢の中はとても心地いいんです)

(夢の中では涙は流れないんです)

(夢の中では私は笑っているのです)

(夢の中ではあなたが傍にいるのです)







「そういや、お前その鏡いつも持ってたよな」
「今更思い出したか!っけ、ばーか」
「そっか、好きな奴でも出来たわけか」
「・・・なんでそうなんの!」
「身だしなみが気になるっつーことはそうだろ」





シュウは暑いのにポケットの中に手を突っ込む。長い脚の歩幅についていくのは大変で、余計にムカついた。絶対、自慢してる。どうせ、私は短足ですよ!
鏡をシュウの頭に投げつけた。ゴッっと痛そうな音がシュウとス○イリーの鏡の衝突で鳴った。だって、もうあんな物イラナイもう、夢さえあれば私には十分なのよ!





「さくら、てめー」
「ばーか!」
「んだと、おい」
「私にだって好きな人ぐらいいて当たり前だっつーの」
「絶対そんなんじゃ、好きな奴も振り向かねー!」
「・・・」
「(お・・・?)」





急に無言になるさくらにシュウは呆気にとられる。そして自分が今、つい何を言ってしまったか後悔した。
少し汗をかきながらシュウはさくらと向き合って顔をのぞきこむ。





「だから夢にいたいんだよ!!」
「うお!?」



突然叫んだ私に吃驚してシュウは一歩下がった。むかつくむかつくむかつく!殺気立った目でシュウを睨んでいると、遠くの方で大嫌いな人の姿が見えた。
その人はコッチに気がつくと周りに花が咲いたかのように可愛い笑顔になった。





「さくら、お前さー、もっと人間らしくなれ」
「シュウ」
「あ?何だよ」
「シュウ」
「だから、何」
「シュウ・・・」
「そろそろ本気で怒ろうか」
「・・・」





無言になりつつさくらに溜め息をついてシュウは空を見上げた。今日は見事な快晴だった。
そして、またベシっとさくらの頭を叩こうとしたが、その前にさくらが口を開いた。





「あっちで彼女が待ってるよ」
「え、あ?」




さくらが指す方向を見ればニッコリ微笑んでいる俺の今の女がいた。仕方なく手を振った。




「行ってあげなよ」
「分かってるって」
「彼女かわいいね」
「まあな」




さすが俺の彼女、と言いそうなシュウの足を踏んでばーか!と言ってやった。
少し怖い笑顔でシュウは「覚えとけよ」って言って彼女のもとに、また手をポケットに突っ込んで行った。





ス○イリーの鏡は草陰に落ちていた。

もうイラナイから、捨てた。






(夢の中は苦しいのです)

(夢の中では私は泣いているのです)

(夢の中ではこんな自分を笑っているのです)

(夢の中ではあなたは私を抱きしめているのです)





夢は現実でもないから。
だから、痛いんだ。




いっそ夢の中で過ごしたいと何度思ったのかな
だけど、夢は苦しくて目覚めた後は現実を思い知る。










趣味の悪い鏡なんてもうイラナイよ



「シュウがくれたくせに」


















忘れないで欲しかった。

































夢は痛いままだ













































(きっと明日は笑えてるから、スマイリー)



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