プレイボーイ 「お兄ちゃんは、もう彼女でも出来たのかしら?」 「出来たんじゃないですかね」 「あら、やっぱり年頃なのね」 はっきり言って、この質問はものすごく失礼なんかじゃないのか。 私はそう思わずにはいられなかった。まぁ、親戚だから許させるかもしれないが。 確か用件はお中元のお礼だった。だけど、何故いきなり兄の異性関係の話になっているのか。 最近の子は進んでるんだよ、伯母さんはそんな事も知らないのね。 しかし、聞かれても兄のことなんか私は知らないし、異性関係なんかもっと知らない。 でも中学校のときはよく家に帰ってこないで彼女の家に泊まってたみたいだ。 自分の兄なのに、全く似ていない。さすが、としか言いようがない。 やりすぎだろ、お前。とか言いたくなる。 「じゃあ、母に伝えておきます」 ガチャ 電話の受話器を置く ふと、辺りを見渡すとレトロな椅子とテーブル 見慣れたうさぎのぬいぐるみに、大きいとも小さいともいえないテレビ 日本語で書かれた日めくりのカレンダー そこには8月22日と大きくあった。 そう、ここは私の家 つまり今は夏休みで、から学生寮から家に帰ってきていた。 そして1週間後、私は寮に戻ることになっている。 だけど早く帰りたかった。 現在この家に家族はいない。 母と父は何故か娘をほったらかして海外旅行へ行っている。ここの家族はおかしいんじゃないかな、最近そう思えてきた。 電話の話題にもなった1つ上の兄はどこかを放浪している。高校もロクに行ってない。世間で言う不良だ。 そして、いつ帰ってくるかなんてわかりゃしない。 でも、今はいなくてよかった。 「あつー」 ありえないほど暑い。 帰ってきても別にする事はない。それなのにどうして帰ってきてしまったんだろうか。 キャミソールとスカートじゃなかったらやばかったと思う。ズボンなんてはいてたら汗で気持悪くなってしまう。 自然と溜め息が出る。 こんな事なら寮に残ればよかった。 それならまだ涼しい場所で過ごせたのに・・ 床に座り込んだら冷たくて気持ちよかった。 私の兄は昔から女遊びは激しかったし、万引きはしてたし、家出なんてしょっちゅうだった。 でも、そんな兄でも私は好きだった。 兄には彼女がいた。だが、最新の情報によると、現在は、カナコとかいう女の人の家に入り浸っているらしい。 浮気だよ。いつか刺されるんじゃないかと不安です。 この前、中学時代の友達とそういう話について盛り上がった。 兄の話をしたら「プレイボーイね!」とか言われたのだ。 プレイボーイ プレイボーイ・・ ヤル男・・・ 万年発情期男 うさぎって発情しない。 ていうことは、いつも発情してる。 その後も友達といろんな事を話しました。 高校の友達とは話せない事ばかり。 みんな、そういう話が大嫌いだからだ。 「あついあつい」 暑さにKOされて、寝転がろうと思ったら背後に人の気配が 「スッキリした?」 「おう」 後ろにいたのは上半身裸の男(服着ろよ) 「本当さー、突然、家に来たと思ったら風呂貸せなんて吃驚した」 「暑すぎなんだよ」 多分、寮からここまで来たのだろう。 何故ここに来たのかなんて定かではない。 何か恐ろしい事をしてそうで怖い。他の皆は?と聞いたら「ヒマそうだった」と返ってきた。 じゃあ、皆も来ればよかったのに、と呟いたら彼は「おまえと2人っきりがいいんだよ」って。 あー、暑い。 「何か飲む?」 「頼む」 台所に行ったらクーラーが全く効いていなくて熱気が凄かった。 熱中症になりそう。 思わず冷蔵庫を全開にしてしまう。だって熱い 「お茶でいい?」 「いい」 透明なグラスに注がれる麦茶 キラキラ輝いて綺麗だった。 「はい」 「サンキュー」 お兄ちゃん帰ってきたらどうしようかなー。 何ていえばいいんだろう。 まぁ、彼氏だし。紹介しといた方がいい、よ・・・ね あれ、れ? 「・・って、何してんのよ!」 背中に冷たい感じがしたと思えば、私は押し倒されていたわけで ちゃっかりと、グラスはテーブルの上に置かれていた。 ああ、せっかく入れたのに全然飲んでないじゃん! 「俺、我慢してたんだけど?」 「そんなん知らないってば!」 背中から伝わる床の冷たさに、今はゾクっとした。 もしかしたら夏風邪かもしれない。 昨日、肩を出して寝てしまったから否定は出来ないのだ。 「ちょ、どいて!!」 「やだ」 「あんたねー!」 「両親いないし、いいじゃん」 「帰ってくるかもしれないの!」 ていうか、寮からここまで、ヤリに来たの? そう言ったら彼は苦笑した。 呆れて溜め息さえも出なかった。 あと、1週間ぐらい我慢してよ、って反論しようとしたら口を塞がれる。 捲くれ上がったスカートを直そうとするが、腕はあっけなく掴まれた。 「このまま俺と帰ろっか」 「無、理!」 「部屋独占してるんだけど」 それは、決定事項なんですか。 すでに部屋独占してるとか、毎日する気満々・・・? コイツならやりかねない。 絶対やだ 死ぬって。 それなら、暑さに絶えるほうがいいし! 「いやだ、いやだ!」 「我侭」 「もう帰れ!変態!!」 さすがに、折角ここまで来たというのに「帰れ!」と言われてムカついたのか、「変態」といわれて不快だったのか、どちらにしろ機嫌を悪化させたのは事実なようだ。 ヤツの手が、スカートの中に無断で進入してきた。 「怒るよ」 「こっちだって結構キテるんだけど」 「・・・なんで」 「8月に入ったら、すぐ帰ってくるって言ったくせに」 「だから、謝ったじゃない。家の留守番とか、しないといけなくなったのよ!」 両親が旅行にいったんだから仕方ない。 「溜まってんだよ」 「(目が本気だ・・!)」 こうなったら言う通りにするしかないのか。 溜め息をワザと大きくつく。 だけど、それをみて彼はニヤっと笑った。まるで悪魔のようだった。 私は彼に敵わない。 「今から寮に戻って1週間部屋独占するか、 1週間後帰って、始業式に出られない状態になるか」 ああ、何で私こんな奴と付き合ってんだろ 「どっちがいい?」 ニヤニヤ、私の上で笑っている。 「アンタもプレイボーイだった・・」 結局、彼もこっちに1週間いることになった。 兄と遭遇するのも、そう時間はかからないだろう。 私の周りって、プレイボーイ、ヤル男ばっかな気がする・・ |