あの野郎、絶対泣かすっ! 仕返し in 休憩室 「ねぇ、トオル」 「ん?」 「浮気しよう」 「・・・はい?」 トオルは読んでいた本から顔を上げた。 そして急に何を言い出すんだという目で私を見た。 そんな目で見るな! 「だーかーら!私と浮気しましょう!」 「君には素晴らしい彼氏がいるじゃないか」 「・・・」 そうです。 私には彼氏がいます。 まぁ、浮気って言うんだから彼がいて当たり前だけど。 「その素晴らしい彼氏が今何してるか知ってるでしょう」 私がそう言ったらトオルは苦笑いした。 「だからいいじゃない。浮気しよう」 私の彼氏はトオルの親友でもある彰 奴には私という(自分で言うのもなんだけど)素晴らしい彼女がいる。 にもかかわらず、他の女と真昼間からヤッてる。(もう日常茶飯事だ) まじでありえないんだけど! 「でも浮気は出来ないよ」 「何でよ!?」 「だって彰は大事な親友だからね」 何であんな奴がトオルの親友なのかこの世の中可笑しいわ まぁ、女関係を除けば彰は素晴らしい人だけどね。 「じゃあ、私はトオルにとって何よ?」 トオルは躊躇った。 もしかして私ってどうでもいい存在なわけ? 「奈々も大事な、親友だよ」 その答えに少し安心した。 よし、これで話が進むわ! 「その大事な奈々ちゃんが頼んでるのに君は無視するのですかー?」 「(奈々ちゃん・・・)」 「ねぇ、いいでしょ。」 私はトオルの上に跨る。 腕はトオルの首に巻く。 その時ソファーが鈍い悲鳴を上げた。 「奈々」 トオルは笑顔だ。 「だめ?」 「やっぱりこういうのはダメだよ」 トオルが私の腕をはずす。 っち、やっぱり無理か・・・ 「いいもん、トオル以外の人に頼むから!」 って言てみたが、他に誰に頼めんの!? 皆、彰を恐れて私の頼みなんてきっと聞いてくれないよ!! 私と話しただけで彰に半殺しにされかけた男の人もいて。 ていうか、私は束縛して、彰自身は浮気しているって、どういうことだ? むかつくのよー ため息をしてトオルの上からどこうとした時 「きゃっ!?」 トオルの上に倒れた。 紛れもない、トオルが私の腕を引っ張って戻したのだ。 そしてぎゅっと抱きしめられる。 「な、何!?どうしたの、トオル!?」 「ん、浮気?」 トオルは怖いほど笑顔だった。 「え、何で急に・・・?」 さっきはダメって言ってたのに。 そしたらトオルは休憩室の入り口を見ていた。 その方向に目を向ける。 「あ・・・」 「でしょ」 私もトオルに抱きつく。 トオルは彰とは違って少し細かった。でも、とても落ち着く優しい匂いに安心する。 「でもいいの?」 聞えないように小声で話す。 「まあ、彰にも痛い目あってもらわないとね」 顔が近い。 トオルって綺麗な顔だなぁ・・・ 何て思った。 「彰がいなかったらトオルの事好きになってたなぁ」 「え?」 思わず口からポロリと言ってしまった。 トオルは目を見開いてた。 そんな驚くような事かな? でもそれは嘘じゃない。 彰よりトオルを好きになった方が幸せなんだろうな。 トオルはきっと大事にしてくれる。 「――きゃ!?」 後ろから力いっぱい引っ張られた。 私は、振り返ろうとした・・・ ―――― ぐいっ 「っわ、ちょっ・・」 振り返る前に、抵抗を許さない凄い力で引っ張られて危うくこけそうになった。 でも私はその腕を振り解かなかった。 振りほどけない。 まぁ、あっちが放さないだろうけどね。 顔がにやける。 トオルには悪いけど利用させてもらえて感謝してる。 「奈々」 「トオ、ル・・・」 ――っぐい ありがとうって言おうとしてまた引っ張られた。 私は仕方なく前を向く。 今、後ろを向けばトオルが殴られると思ったから。 どうやら彼は本気で怒ってるようだ。 これからどうなるか想像出来る。 きっと今日は確実に寝れないな。 でもそれは彼が妬いてくれるから。 きっと彼も私に妬いて欲しいがためにあんな行為をしてるんだろう。 でもされる身にもなって欲しい。 私だけを見て欲しい。 彰・・・ 彰の背中を見ながら歩調をあわせる。 早足だから足がもつれる。 「彰」 一瞬、彰が顔だけ後ろを振り返らした。 でも、私を見ていない。目線は休憩室の方を向いていた。 何を見ていたのか何となく分かった。 ごめん、トオル 「彰」 また呟く 「お前は俺のものだろ」 返ってきたのは怒気を含んだ声 顔がニヤける それが彰にばれないように俯く(きっと見えないけど) 「誰にも渡さないからな」 「じゃあ、他の女と寝ないで」 浮気しないで・・・ 私が懇願すると 「しない」 今まで何度も「しない」って言ってたけど、 全て嘘だったけど、 きっとこの言葉は本当だろう。 信じれる。 彰はこっちを見てくれないけど、 背中越しでも真剣な顔してるって分かる。 「お前は俺だけのものでいろ」 なんて独占欲 私って自由なし? でも、 「私は彰だけだよ」 うん、さっきは少しトオルに揺らいだけどね。 (トオルにも渡さないからな) その声は小さすぎて、彰が何て言ったのか聞えなかった。 「え?」 「何でもない」 そう言うと彰は初めて私のほうに振り返った。 「彰?」 「奈々は俺だけのもの」 その言葉と同時に私は彰の匂いがするベットに押し倒された。 彰が覆いかぶさる。 その顔は何時ものように余裕たっぷりの顔じゃなかった。 「彰は私だけのもの」 「あたりまえ」 自然に笑みがこぼれた。 |