寂しい寂しい廊下に1つの日記帳が落ちていました。





それに気がついた少年は迷うことなくそれを拾い上げて自分の上着の中にしまい込んでしまいました。














very × Short

〜 Diary 〜












「あれ!?」

1人の少女が顔を青ざめたのです。

その慌てた様子は何かを探しているようでした。


(どうしよう、日記帳を落としちゃった!)


そうです。

彼女はいつも持ち歩いている大切な大切な日記帳をどこかに落としてしまったのです。

勿論、日記帳なので名前は書いていません。

それを、きっと、誰かが拾ったとしても少女に返ってくることは不可能に近いのです。

そう、中身を見ない限りは・・・



(いや!中身なんて見られたら恥ずかしくて死んでしまうわ!)



そう考えると彼女はいっそう、立ち寄った場所を訪れ、辺りを隅から隅まで探し始めました。

どうしてそこまで必死になるのでしょう。



(あの日記帳には私の気持ちがいっぱい書いてあるのに!・・・ケイ君の事を好きだなんて、皆に知られたらどんな顔して会えばいいの!)



ケイ君は、隣のクラスの生徒で、成績優秀、容姿端麗、人気者な彼なのです。

そんな彼と少女は幼い頃からの知り合いでした。

言い方を変えると、いわゆる幼馴染です。


そんな彼に密かに想いを寄せているこの少女


彼女はとても内気なので気持を伝える事など到底出来ないのです。

そして溢れ出たその気持は日記帳へと流れ込んできました。

だからこれ程にも慌てているのです。




(どこで落としたの?!)




自分の今日1日の行動を振り返ってみますが全く分かりません。

もうこのまま諦めるしかないのでしょうか

涙で瞳が潤んだとき


「おい」

誰かが少女を呼びました。


けれど、この少女には友だちと呼べる子がいなかったのです。

少女に話しかける人なんてケイ君以外いません。

でも、この声はケイ君のものではありませんでした。



少女は不安な顔をして振り返ります。

そして意外な人物に少女は大きな瞳を見開かせます。



そこに立っていたのは、不良グループに属しているクラスメイトの丹羽(にわ)君でした。





震える声で返事をすると少年は不機嫌そうな顔をしました。

少女はその様子にビクッと肩を震わせます。


「ほら」

少年は何かを少女の前に突き出しました。

不思議に思ったが、突き出されたそれを受け取り、見てみると、それは探していた日記帳ではありませんか。


嬉しさと悲しさが少女を包みました。


「どうして・・・、これを!?」


少女が問いかけた時には、もうそこには少年の姿はありませんでした。



でも何故、彼が少女を呼んだのでしょうか。

少年と少女は何の繋がりもありません。


そしてどうしてこの日記帳が少女が落としたものだと知っていたのでしょうか。



少女は泣きたくなりました。

中身を見られたはずです。


震える手で日記帳を開けます。

そこには毎日の出来事やケイ君と話した事や、私の恋心についてぎっしりと書かれています。


これを見られたんだ・・・そう思うと、恥ずかしくて、穴があったら入りたいと少女は思いました。



自分の字が埋められているページを追いました。
そして最後のページにたどり着き、無意識に次のページをめくっていました。
そこには、まだ何も綴られていない、真っ白がただ広がっているはずなのです。
しかし、真っ白ではありませんでした。
何かが小さく書いてありました。

その字に少女は見覚えはありません。

勿論、少女が書いたものではないのです。


女の子にしては少し汚い字で

男の子にしては綺麗な字です。


食い入るようにその字を読むと

少女は顔を真っ赤にしたのです。




恥ずかしい気持と

胸のときめきが少女を包み込みました。


少女は日記帳を閉じて、今度は落とさないようにと大事に大事に、両手で胸に抱きしめました。



























以後、少女の日記帳から、その字が消される事はありませんでした。


ただ一言

「好きだ」という愛の言葉は今も残っています。






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