The die is cast.

伝えない 気持ち  言えない 心  繋がら ない








「欲求不満男」
「何とでも言うがいい」
「普通私にまで手を出すかなぁ?」
「お前こそなに抱かれてんだよ」
「抵抗なんて無意味なだけでしょ」
「まあ、抵抗したってやめないけどな」
「避妊はしなさいよ」
「わーってる」






今、私はケイという男に押し倒されているわけなんです。しかも突然。いきなりコレ。笑いが出そうだった。でも出ないのがまあ可笑しい所だ。
無抵抗な女相手にネクタイで両手首を縛るこの男。
普通なら怒って当然の状況に私は何も思わない。ていうか、言っても無駄だって分かっている。





まあ、私も暇だったし






夜の月明かりの下にいるケイの顔はハッキリと見えていた。相変わらず整った顔立ちで惚れ惚れするよ。まあ、確かにこの男に言い寄られて落ちない女はいないよね。先月だって私の馬鹿友がケイに告って振られていた。あんな馬鹿と思わなかった。ケイに惚れるなんて馬鹿なこと。私なら絶対しないのに。
それにしても・・何度目だろうか、この行為に及ぶのは
もう、数えきれない。


数えるのも嫌になった。
















































「起きろー」
「う、ん・・・もう朝?」
「早くしないと遅刻すんぞ」
「あー、だる」
「早く支度しろって」






あの行為の後、どうやら眠ってしまっていたみたいで、ケイはボーとしている私を見て溜め息をついたみたいだ。
ふと、ケイの方を見ると、すでにスーツを着ていて、ちゃっかりと私の服まで手に持っていた。コーディネートまでしてくれたみたいだ。
「貸して」と言って手を伸ばしたが、ふいに手首がズキンと痛んだ。






「・・・」
「悪かったって。そんなに痕残るなんて思わなかったんだよ」





ネクタイのせいで痕がついた私の両手首は真っ赤だった。






「どう隠せって言うのよ」
「そんな痕、手首だけじゃないだろ」
「そこは見えないからいいのよ」
「そうか」
「そうよ」






仕方なく服に腕を通す。
手首のほかに体中が疼いたけど我慢した。でもそんな事はケイにはお見通しで、こっちをニヤっとした変態っぽい笑顔で見ていた。
あの笑顔は本当にたちが悪いと思う。私の馬鹿友達はあの笑顔を見るだけで呼吸困難に陥るのだ。
本気でありえない。
ありえなさすぎて笑えてくる。時々思うけど、私はきっと友達より恋を選ぶんだと思う。友達なんて要らない。私は1人がいい。あれ?恋人も無理なのか?






「気持ちよかっただろ」
「そんなこと乙女に聞かないで」
「お前のどこが乙女だよ」
「心は純真なの」
「天使の仮面を被った悪女だよ、お前は」
「そう、嬉しい。おケイ様はエセ王子ね」
「エセかよ」
「しかも最低の」
「男なんてこんなもんだ」







いいや、あんたは一般的な男性の枠組みから大分かけ離れているよ。







「じゃあ、狂犬(フン)」
「何か馬鹿にしたな」
「着がえたよー」
「朝食は抜きだ」
「体力残ってないのに」
「何ならこのまま休むか?」
「馬鹿いってないで早く行く!」
「へーへー」






私の後ろをネクタイを結ばずに肩だけにかけているケイが歩く。だらしないが、それも会社に着くころにはキリッと真面目な仮面を張り付けていることだろう。




確か昨日の晩から私たちは一緒にいた。
いたっていっても半ば強引に私を拉致したんだけど。見られていたら一体何をしているんだ、と怪しまれる。
特にケイといたら怪しまれてしまう。ケイは女遊びが激しい。そんなのと何時間も一緒にいたらやってる事は1つ、だと思う。思われる。





まあ、実際そうなんだけどね





だけど、そう思われるのは嫌だ。
私は別にケイの恋人ではないし、なるつもりもない。なるわけがない。
何故なら








「あーおはよう」
「おはよう」







通路を歩いていれば噂の馬鹿友達に出くわした。
本当についていない。



「ケイさん、おはよぉう!」


馬鹿友達は挨拶をするけど、100%ケイは彼女の事を覚えていないんだと思う。ケイが女の名前を覚えるはずがない。まあ、覚えないって言うのはケイに一方的に好意を持つ人だったり、いろいろなんだけど。兎に角ケイは縛られるのが嫌いなのだ。





「あー、はよ」






めんどくさそうに欠伸をしながら馬鹿友達にケイは挨拶返して、そのままスタスタどこかに行ってしまった。
きっと、タカさんの元へ食べ物をたかりに行くのだと思う。
面倒見のいいタカさんを、ケイと私は慕っていた。
後で私も分けてもらおう。







「本当、かっこいいー!!きゃー!」
「あんな奴のどこが・・・」
「でも、あんたはイイよね〜!」
「どうして?」


ふいにズキリと手首が悲鳴をあげた。



「だって、ケイさんが兄だなんて!!」




















私は好きにはならない




back



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -