サワサワ、ワラワラ
「お前何してるわけ」
彼は今まさに、素手で穴を掘っている目の前の少女に足蹴りをしようとした。
寸前、その迫りくる影に気がついて「うぎゃー!」と言い放ちながら少女は横に転がり避けた。
「突然っ!何、するのよ!乙女に向かって!!」
「はッ」
「鼻で笑わらうな!」
「乙女が素手で鼻息荒くしてヤンキー座りして穴を掘ってるかっての」
ここは大きな木の下。
蟻がうじゃうじゃと群をなしている。
数時間前にアイスがぼてっと落ちたのであろうと思われる抜け殻の棒もあった。
そんな蟻やらあらゆる虫やらがうじゃうじゃといそうなこの場所で何のためらいもなく、少女は素手でせっせと穴を掘っていた。
その姿を見た瞬間、彼は何を思ったか。
なんだこの女、全く分からない。
「あ!私ね、今タイムカプセル作ってるの!」
「・・・」
まぶしいほどの笑顔で言う少女に彼はまた何か始まったとため息をついた。