そう、世界一の顔の君はヒーローだった (( も、 もうダメだ・・・! )) 限界に達し、全身には痺れが駆け巡って思わず「ひいぃ」と悲鳴をあげた。 私の顔は苦痛に耐える顔となってしまっていた。多分、今この時、私の顔は人生でベスト3に君臨するほどに、ブサイクな顔だっただろうと深々と考えた。 まぁ、1位の座を奪う程ではないことを喜ぼう。そして、一位に君臨する最強ブサイク顔のことは忘れよう。思い出せばまた自己嫌悪に陥ってしまいそうだからだ。というか、すでに陥ってしまっているので、これ以上、下の下にまで落としたくなかったのです。 ああ、それにしてもお腹いたい。この痛みからはどうやっても逃れられないそうだ。そして気持ちが悪い。吐きそうだ。おええ・・・なんて、まさか死んでも出来るはずがない。そんな吐いている顔はきっとベスト3ランクインどころか人間という枠組みを飛び越えてしまうだろう。妖怪だ。 じっとして、少しだけ症状が軽くなってきたのはきっと気のせいではないはずだ。このまま、お腹が痛いのも、おぞましい顔をしてでも吐きたくなる吐き気も全て消えてなくなって元気いっぱいな人間にあと数秒でなるんじゃないかと本気で思ってしまう。願う。 でも、まあそんな簡単に叶うわけない。ぐったりとそのまま倒れこんだ。目を閉じてもう何かも考えられなくなっていて、そのまま眠りこける。全て忘れてしまったように、ここがどこかも、忘れる。 . . . . . (( あ、 何か マシになってきた かも )) どのくらい時間が経っていたのだろうか、一時の、あの酷い腹痛と吐き気、だるさ。死にかけていた体が正常に戻っていくようで、気がつけば私はどうやら本当に眠っていたようだった。しかし、まだ眠り足りないようだ。目がパッチリと開かない。ああ、もうちょっと寝ようとか・・・本気で思っていたら、ふと思いだした。今まで、自分が倒れこんで眠りこけていた場所はどこか、と。 「やっと起きたか」 「(ひッ!)」 重い瞼を持ち上げて見えたのは真っ青な空。治ったはずの腹痛が舞い戻ってきそうな感じがして泣きそうになったのだけど何とか踏ん張った。 視線を横に移すと、見知った顔があった。私を見つめていた。どこかしら呆れた様子の顔だった。なによ、ブサイクな私の顔を見下ろして何が面白いのだ。急に、恥ずかしくなった。別に、恥ずかしがることもないのに。いや、常識外れこの己の状態。恥ずかしくなって、私は乙女なのだから仕方がないではないか。 現実から離れ眠りに着きたくなった。現実逃避が得意技なんて履歴に書けないのも悩みなのである。 「てっきり死んでるのかと思った」 「うん、・・・?」 「こんな寒い中、人が倒れているんだからな」 (( あ、 何か泣きそうだ )) 何故だか急に涙が出そうになってきて目を擦った。そしたら、鼻水が出てきた。寒さによって外に出た鼻水は一瞬で冷たくなってしまった。何だか鼻水まで添えられてバカ面に拍車がかかった気がした。 鼻水をふき取ることは出来ずに私はただただ、目から流れてきたらしい、熱いものを押さえるのに必死だった。さっきまで寒さを感じなくて、景色さえも全く見る余裕がなくて。色がなかったのに、今はこんなにも体全身で感じている。それは、私が今生きている証拠なのだろうか。 「辛いのわかるけど、がんばれよ」 その言葉の真意が分からなかった。一体何が辛いのか彼にわかるのか。私さえ分からなかったことなのに。私の一体何が分かるのか聞きたくなったけれど、何となく否定することも聞くことも今はおかしいように思えて、まともに返すことが今の私には出来なかった。 ただ小さく、うん、と頷いただけだった。 |