▼ 小さい肩を抱きながら (1/14)
一歩、家を出ると、途端生温い空気に包まれた。
「うわ、あったけぇ」
思わずもれる声。
寒さを予想し縮めていた首をのばせば、すっと、柔らかい風がとおり過ぎていく。
最近の気温は上がったかと思えば急に下がったり、かと思えば次の日にはまた予想を裏切り上がったり……全く規則性がない。
つい昨日まで刺すようだった冷たい風も、今日はやけに優しく感じる。
昨日の風がいのなら、今日はチョウジってところか?
ふと浮かんだ考えを笑いとばす。
よくよく目を凝らして見れば、近所の木はつい最近まで丸裸だったはずなのに、今では小さいけれどしっかりと花を咲かせている。
桜にしては開花時期が早いし、なんの木なんだろうか。
実家が花屋のいのに聞けばすぐに分かるんだろうが、それも面倒。
とりあえず綺麗な花が咲いてましたってだけの事。
そう思ってちらつく桃色を横目に歩きだすと、ホーホケキョ、どこからか鳥の鳴き声も聞こえてきた。
ひそかな春の訪れ――
「そういや……」
アイツの誕生日がくるのは、いつもこんな日が続いた頃だったっけ。
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