ひだまり | ナノ


▼ 空はきんいろ (2/18)

サクラの話によれば、今年の体術の授業で勝ち星が少ないのは、同着で私とナルトだという。
目立たないわりに総合的な成績はいい私。
体術さえクリアしちゃえばあんたも優等生の仲間入りなんだけどねぇ、と事あるごとにサクラは言うけれど。
忍服の裾を指でいじる彼女の視線は隣にいる私を向かずに真っ直ぐ前へ、意中の相手から一瞬たりとも離れようとせず、なんだかなと思わないでもない。

時刻は正午を過ぎていた。
食後のけだるさに加え、真上から降り注ぐ陽光は私たちの眠気を誘う。
あくび混じりに順番を待つ男子が校庭の隅ににどかっと座り込む傍ら、女子は全員起立でこの暑いのに肩を寄せ合い、たった一人の応援に精を出していた。
そう、今は体術の授業の真っ最中なのだ。

「――勝者、うちはサスケ!」

イルカ先生の判定にいちだんと高い声が上がる。
開始の合図から数秒しか経っていない。
今日も絶好調のサスケ君は、絶妙にセットされた黒髪を乱すことなくあっさり勝ちを決めたらしい。
いつものことだ。
そして勝ったにも関わらず喜びの表情一つ見せないで、地面に伏す敗者をまたぎ王者の貫禄を見せつけた。

避けて通ればいいものを、人を見下すことにかけては右に出るものなし。
しかもそれをやるのがサスケだからこそ格好つくのであって、恐らく自覚的にやっているところが小憎らしい。

そんなことを考えていた私は、キャーと色めき立つ女子との温度差にうんざりし、こっそり彼女たちから距離を取った。
するとその様子が視界の隅にでも入ったのだろう。
サスケはふとこちらへ視線を投げかけ、何を思ったのか口元にうっすら笑みを浮かべた。

一瞬、しんと静まり返る。
その後、

「いーやー!サスケ君たら超クール!」

いのの叫びを皮切りに、自分に向かって微笑みかけたと信じて疑わない女子たちが一斉に唸りをあげた。
握りしめた両の拳を口元に当てたポーズは乙女全開だ。

こうなったらもはや収集がつかないぞと、呆れたようにため息をつくイルカ先生。
しかしそれもサスケが口を開こうとした気配だけで、指揮者がさっと構えたたときのような静けさが訪れる。

「オレは本気のお前と戦いたい」

サスケは、はっきりとした口調でそう告げた。
そして言うだけ言うと、周りの反応なぞ気にも留めずフェンス沿いにある木陰へと移動し、自分と世界とを遮断するように目を閉じる。
一部始終を見終わるまで、我関せずの態度を貫いていた男子たちですら空気を読んで黙っていた。
しかし――

いやいや、お前って誰だよ。

含みのある言い方に内心毒づきながら、同意を得られないまでもサクラと言葉を交わそうかと振り向いた。
その瞬間、気づく。
今、この場の視線を一身に集めているのはサスケではなく、私の方なのだと。

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