▼ 8.今を生きる (1/9)
目の前まで迫った凶器。
そしてその軌道の先にいるのは、ソラ。
再不斬の大刀の威力は知っていた。
避けなければ、死ぬ。
それも確実に。
火影様たちの厚意に甘えのうのうと暮らしてきた少女にも、それくらいは理解できていた。
それでも足がすくんで動くことができないほど恐怖を感じていた。
これならいっそ、霧が立ち込めていれば良かったのに…。
これが走馬灯というものなのか。
動かない体の代わりに、頭だけがこれ以上ない早さで回転している。
殺気にやられ、指一本どころかまばたき一つすらまともにできない。
いや、そんなことをする時間を与える暇もなく、刀は急速にその距離を縮めていた。
今死ぬか、後で死ぬか。
ソラが行動して選べた未来は、それだけの違いだったのかもしれない。
本当に、あのときは――。
「死ぬかと思いました」
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