▼ 6.痛みに誓う決意 (13/13)
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そこは太陽の光も差し込まない、薄暗く陰鬱な森だった。
外界からの視線を避けるようにぽつんと建てられた小屋の中から、突如として怒鳴り声が響いた。
「失敗したじゃと…!?」
声の主は小屋の中にいた小柄な男のものだった。
サングラスをかけたその男の表情は読み取りづらいが、先に送り込んだ刺客が任務に失敗しご立腹のよう。
その男の後ろには護衛の者らしき人が控えている。
そして彼の右手にはさらに、数人の忍が膝をつき待機している。
小屋にいるだけでかなりの数の忍だ。
「お前たちが元腕利きの忍者じゃというから、高い金を出して、雇ってやったんじゃぞ」
「グチグチうるせえよぉ」
わめき散らす男に、ドスのきいた低い声が応じる。
ひっと声をもらした男の前には、刃物が突きつけられていた。
いやに長く、大きな刀だった。
ソファーに深く腰掛けた忍は、重量感あるその刀を、片手で軽々と持ち上げていた。
依頼人と請負人――二人の間でその関係はあまり意味をなさないのか、忍の態度には謙虚さがまるでない。
「今度はオレ様が、この首斬り包丁でそいつを殺してやるよォ」
「ほっ…本当に大丈夫だろうな?敵もかなりの忍を雇ったようだし、その上鬼兄弟の暗殺失敗で警戒を強めてるとなると、容易なことでは――」
「このオレ様を誰だと思ってる?霧隠れの鬼人と呼ばれた、この桃地再不斬をなァ」
自信に満ちた、傲慢な態度。
それが言葉だけの虚勢でないことを知っているのは、異世界からきた頼りない少女、ただ一人だけ。
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