▼ 5.波の国へ超出発! (2/10)
場所は火影の執務室へうつる。
ナルトが捕まえたトラは、依頼主であるマダム・シジミの元に手渡された。
「あぁあぁ、あたしの可愛いトラちゃん、死ぬほど心配したのよォ?」
輪郭が変わるほど頬をすり寄せられ、トラの鳴き声はもはや悲鳴に近かった。
無事――では済まされていない者もいるが、ともかく任務は終了だ。
「ざまぁみろってばよ、あのバカ猫。一度ならず二度までも、オレ様を引っかきやがって!!」
「逃げんのも無理ないわねーアレじゃ」
好き勝手言ってるナルトとサクラを横目に、それにしても不憫だなあとソラはしみじみ思う。
きっとトラの捕獲費用は、毎月の生活費の中にすでに含まれているのだろう。
「さて、カカシ隊第七班の次の任務は――ん?老中様の坊ちゃんのお守りに、隣町までのお遣い。イモ掘りの手伝い」
「ダメー!そんなのノーサンキュー。オレってばもっとこーすんげー任務がやりてーの。他のにしてー」
あろうことか火影様の言葉を遮り、駄々をこね始めるナルト。
確かに、ここ最近は、ソラが同伴しても差し支えないのない任務ばかりだった。
これなら忍でなくても出来る雑用だ。
目立ちたがり屋のナルトがこれで満足するわけもない。
下忍の不満を抑えながら班を指揮するのも大変だな…。
ソラはカカシへ憐れみの視線を投げかけた。
案の定、隣人はすでに深い溜め息をついていた。
だが一般人が口を出すことでもないと、成り行きを見守っていたところで、突然、机をバンと叩く音がする。
火影の横に控えていたイルカが、両手をついて立ち上がったのだ。
「バカヤロー!お前はまだぺーぺーの新米だろうがっ。誰でも初めは簡単な任務から場数を踏んで繰り上がってくんだ」
ナルトを叱るのはアカデミーの頃からイルカの役目なのか、妙に板についた説教だった。
「だぁーってだってー、この前からずーっとしょぼい任務ばっかじゃん!」
大げさに抗議するナルトだったが、
「いい加減にしとけコラァ」
カカシの鉄拳を見事にくらい、地べたに這いつくばった。
しかし不満はおさまらないらしく、なおも食い下がる。
「でもさでもさー、今回の任務もこれで二回目だぞ?なんかオレら進歩ないみたいじゃんかー」
「ナ、ナルトォーっ!」
そう言ってイルカの振り下ろした手が机を揺らす。
その拍子に依頼リストをまとめた巻物が床に転がった。
決まり悪そうに慌てて拾いにいくイルカ。
――何か、変だ。
机の前方まで回り込んだイルカを見て、ソラはなぜかそう思った。
何が変なのだろう。
分からない。
だが、何か変なのは間違いない。
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