▼ 4.ヒコーキ雲 (13/13)
『もし諜報目的ならば、里を出ればまたとない機会、すぐに逃げ出すはずです。はたまた木ノ葉襲撃が目的なら…守らなければならない下忍を抱えているオレを殺しにかかるでしょう。
――なんせソラはうちはの血を継ぐサスケの背後をとり、他国まで名の知れたオレの額当てをずらした相手です』
そこまで聞いたアスマは、口元を隠した。
まったく笑わせてくれる。
口では散々もっともらしいことを言っておきながら、結局はこの小さい女の子を守りたいだけなのだと、薄々勘づいていた。
あの写輪眼のカカシと恐れられた男が――。
「なぁ、ソラ」
おしぼりをテーブルに置くと、すかさずいのが店員に話しかけ新しいものを要求していた。
「なんですか?」
「この里は好きか?」
一瞬、口をつぐんだ。
そしてアスマの隣のシカマルに目配せする。
シカマルが笑ったのを見てから、ソラは力強くうなずいた。
「なんだ、今の間は」
「ちょっと任務中に色々ありまして」
「シカマルが何か変なことでもしたか?」
「はっ、馬鹿、してねーよっ」
「なーに、慌ててんの?まさか本当になんかしたんじゃ…」
「おま、いのまで何を!ソラもなんか言ってやれ!」
「あ、ようやく名前で呼んでくれたね」
「ってそんなこと言ってる場合じゃっ……あーもう、メンドクセー!!」
顔を真っ赤にして照れるシカマルに、皆がいっせいに吹き出した。
いのに腕を組まれ笑い合うソラは、どこからどう見ても、アスマの部下と同じただの子供だった。
苦しみや悲しみを乗り越えぬまま、それでもその中で掴み取った楽しみを、精一杯肌で感じようとしていた。
なあ、カカシよお…。
アスマは心の中で同僚に語りかけた。
お前が守ろうとしているこの小さい女の子は、意外と強いぜ。
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