時空の死神 | ナノ


▼ 3.新しい服 (2/11)

「服?そんなのいいよ、サクラちゃんからもらったのあるし」

「だめだめ、そんなの私の古着じゃない。女の子はちゃんとオシャレしないと、ね?」

サクラに可愛らしく首を傾けられ、ソラはうーんとうなってしまう。
実に断りづらい。

「でもお金とか、火影様からもらってるから、そういうことに使うのは…」

ひとまず思いつくままに理由を並べてはみたが、ソラが買い物を渋る理由は、また違う事情からくるものだった。

そう、ソラは、買い物が嫌いだった。

受験勉強を言い訳に、家に閉じこもっていた小学生時代。
学校ではいつも一人で、家に帰ってから会うのも敦史だけ。
そのせいか、誰かによく思われたいといった欲求もなく、わざわざ自分を着飾ろうと思ったことは一度もなかった。

中学に入って何が嬉しかったかといえば、制服があったことだ。
毎朝着る服について考える時間がなくなるのはとても楽で助かった。
確かにスカートははき慣れなかったが、それは毎日私服の組み合わせを考える手間に比べればどうってことない。
家に帰って来てからは外に出かける予定もないため、ラフな格好で十分だった。

とりあえず、めんどくさい。
けれどそんな女の子らしくない理由が、今のサクラには通用しないだろうとソラも薄々感づいていた。

「そんなの大丈夫よ。火影様だってそれくらいのお金は工面してくれるわよ。なんなら、私から頼んで…」

「いや、いいから、本当に!」

「でも、」

「本当に悪いし、それに私この服気に入ってるし!!」

そう言って、サクラから譲り受けた服の裾をつまんでみせる。

全体が深みのある赤色に染められ、ところどころに小さく桜が散りばめられている。
サクラの忍服を和風にアレンジしたら、きっとこんなふうになる。
そう思わせるようなデザインだった。
しかもノースリーブで、膝よりやや長い丈だから、ソラのいた世界でもそれなりに通用する格好と言えるだろう。

本音を話せば、この服ですら、自分には可愛すぎて浮いている、とソラは思っていた。
桃色の髪のサクラが着るから、赤い服は華やかに見える。
しかし制服のときと同様、着られる服が手元にあるならば、似合っていなかろうが毎日着る方が遥かに楽だ。

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