時空の死神 | ナノ


▼ 7.不可避の選択 (2/16)

「そろそろ橋が見える。その橋沿いに行くと、波の国だ」

船頭が、舟を漕ぎ始めてから初めて声を発した。

「…ん?」

その声につられて先頭のナルトが目を凝らす仕草をしたすぐ後。
霧の中に大きな橋が、その全貌を浮かびあがらせた。

工事中らしいその橋の上は、至る所に重機が置かれ、波の国の住人より一足先に木ノ葉の忍たちを迎え入れた。
そして何よりもその大きさに圧倒される。
里を出るときに通った木ノ葉の大門――おそらくそれよりも数段高い建築技術がなければ、これだけ大規模な橋は架けられないだろう。

「うっひょ〜、でっけー!!」

「こ、こら、静かにしてくれ。この霧に隠れて舟出してんだ。エンジンを切って手漕ぎでな。奴らに見つかったら大変なことになる…」

馬鹿でかいナルトの感嘆の声に、注意をする押し殺した声。
慌てて口を塞ぐナルトだったが、先ほどまでの引き締まった雰囲気はもう戻っては来なかった。
その背後から声がした。

「タズナさん。舟が桟橋につく前に、聞いておかなければならないことがあります。あなたを襲う者の正体、その理由を…。
でなければ我々の任務はタズナさんが上陸した時点で終了という線も有りです」

カカシは淡々とした口調で任務内容を確認する。
しかしカカシに話しかけられた当の本人は、顔を伏せたままあげようとしない。

張り詰める緊張感の中、舟を漕ぐ音だけがやけに大きく感じられる。

全員がタズナの言葉を待つように、身体の向きを変えた。
ソラに至っては体育座りをやめ正座をしようとしている。
遠慮がちに動き、それに合わせ微かに船体が揺れ、小さな波紋を描く。
その名残が消えないうちに、皆の視線の先の人物がようやく顔を上げた。

「話すしかないようじゃな。いや、ぜひ聞いてもらいたい」

最悪な依頼人は、こうして重たい口を開いた。

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