「ほら、一年生もこれ持っとけよ!沢山用意してあるからな!」


生温く満たされた朝の談話室の空気をぴしゃりと割って、そこから熱を吹き込んだのは、後ろ髪を跳ねさせたひとりの上級生だった。
靴紐がほどけたせいで、もたもたと爪先が絡まる。談話室に出てから結ぼうと細長い巣穴の通路を抜ければ、ソファの前にはカナリアイエローに身をすっぽりと包んだ男子生徒が山程と、それを遠目に眺めてはくすくすと笑う女子生徒が両手いっぱいそこにいた。そうか、今日がクィディッチの試合なのだ。
談話室の隅に座り込み、靴紐を結びながら、カナリアイエローの山の天辺を見る。目には見えないが、そこに纏う空気が踊っているような気がして、睫毛の先まで飛んでくる。小さな三角を引っ付けたような旗を配る上級生の隣では、目元をすっぽりと隠す真っ黒い獣の仮面をつけた誰かがいて、その誰かは獣の中から此方を見つめてきた。す、と靴紐に視線を落とせば、それは私を見上げるように首を傾げていて、綺麗に結べたとは言えそうもない。


「ニナ」


首を傾げた靴紐に眉を下げれば、それを覆い隠してしまうように頭から影が降ってきた。視線を持ち上げるとそこには先程の真っ黒い獣が立っていて、私は思わず息を止めた。
真っ黒い獣の後ろ頭から、私とよく似たダークブラウンが覗いている。あ、と思った瞬間に、真っ黒い獣は仮面の中から瞳を覗かせて、歯を見せるように笑いながらしゃがみこんだ。髪と同じダークブラウンの瞳は、ニコラス先輩だ。


「驚いたか?これ、アナグマなんだ。本当は黒じゃないけどな」

「アナグマ、ハッフルパフの、アナグマですね」

「気に入ったか?気に入ったんだったらこれやるよ」

「えっ、でも、ニコラス先輩のアナグマが、」

「心配するなよ、直ぐに作れる」


言うなり、ニコラス先輩はまるで首飾りをつけるかのように仮面を私につけてくれた。後ろで結ばれた紐を摘まんでみれば、それは首を傾げずに真っ直ぐ私を見つめている。靴紐も彼に結んでもらったほうが良いだろうかと、私はぼんやりと考えた。
鎖骨に当たるアナグマを撫でれば、ニコラス先輩には私が小さなアナグマにでも見えているのだろうか。頭から耳の裏までゆっくりとなぞるように撫でられて、私はくすぐったさに目を閉じる。く、と、ニコラス先輩は笑っていた。


「ほら、これも」


ズボンと腰の間に挟んでいたのだろうか。後ろ手で小さなカナリアイエローの三角が引っ付いた旗を三本引っ張り出したニコラス先輩の右手が、私の手をつかんでそれを持たせる。彼の頭の中では、私と、サミュエルと、それからミネルバがこれを振っているに違いない。私は旗の先についた金の飾りを指でつつきながら、ニコラス先輩を見上げた。


「アンディに見えるように振れよ。ニナの応援があれば勝てるからな」

「私が応援しなくても、勝てますっ。だって、アンドリュー先輩は、箒は、稲妻なんです」

「ははっ!そうか、そうだな、そうかもな」


はねた前髪をひと撫でして、ニコラス先輩は笑う。チョコレートを溶かしたような瞳がとろけて、甘い匂いがした気がした。
男子寮の通路から、髪を尖らせるように跳ねさせたジャックが、瞼が重たく降りたままのイアンを引っ張り出すように手を引いて出てくる。その後に思わず藍色を探したが、続いて出てくるのは名前も知らない三年生で、私はまた金の飾りをつついた。ニコラス先輩は、笑っている。


「じゃあ、また後でな。俺の隣で応援したいなら、このアナグマを探せよ」


私の首にあるアナグマをとんとつついて、ニコラス先輩は立ち上がる。アンドリュー先輩よりも華奢で薄い腰をぼんやりと眺めながら、私は三本の旗を指先で確かめていた。
一本余る小さなその旗を、私は確かめていた。





ミントを混ぜこんだ眠気覚ましのインクは、レイブンクロー生の間でしか流行らないだろう。インクの間から顔を出すミントの匂いが壁に染み込んだ談話室を出て、階段を下りていく。ホグワーツ城の一番高くにあるその寮は窓辺に座っている時こそとても居心地が良いが、それ以外の時は酷く不便な場所過ぎた。少なくとも、今頃はとっくに待ち合わせ場所にいる筈だった僕にとっては。
階段を下りながら、レイブンクローをほんの少しでも思わせる色が引っ付いてやいないかと自分の体を確かめる。シャツには皺もなく、靴紐はきっちりと結ばれていて、あまり出歩かない僕の踵はすり減ってもいない。かつかつと音を立てながら、僕は長く伸びた前髪をそっと耳にかけた。


「カナリアイエローのものなんて、持ってないし……」


そもそも、クィディッチの試合だって、初めてだ。
長い階段を下りきって、ズボンのポケットに杖がいることを確かめる。それから廊下を真っ直ぐ進み、窓の向こうに見える競技場を横目に見た。グリフィンドールの紅が、ひとつふたつ競技場に向かっている。あの背中のどちらかがマクゴナガルなら、なんて面白いことなのだろう。
ニナは昨夜、しきりにゴブレットの中身のホットミルクをぐるぐるとスプーンでかき回しながら、マクゴナガルはどうしているか、喉を痛めたりしないか、手摺から落ちて真っ逆さまになったりしないか、何かを見ればそれが不安の塊に見えるらしく、口を開けばマクゴナガルの心配をしていた。きっと、イースターが明けてから汽車を降りるなり、まともに話していないからだろう。思わず僕が笑ってしまいそうになるような内容ではあったが、ニナは魔法史の教科書を眺めるよりも深刻な、魔法薬学で大鍋をかき混ぜるよりも真剣な顔をしていたので、僕は奥歯に玉ねぎの筋が挟まったふりをして口を閉じていなければならなかったのだ。


「……まだ来てないか」


奥歯を必死に噛み締めながら落ち合おうと約束したその場所には、僕達と同じ約束をしたらしいグリフィンドール生がそこに立っているだけだった。
中庭の隅から、上へ伸びるほど真ん中へ、広く枝を伸ばした木の下へ、僕はそろりと爪先を運ぶ。あ、と声を上げたのはグリフィンドール生で、軽く手を上げながら駆けてくるハッフルパフの男子生徒を笑顔で木の下に迎え入れた。ひとつ上の学年だろうか。見覚えはあるが名前を思い出すことの出来ないその二人は踵をぴったりと揃えて中庭から出ていき、早くも僕はその場にひとりとなってしまった。
瞼を、半分だけ下ろす。それからもう一度だけレイブンクローらしきものがくっついていないか、靴の裏まで確かめた。小石ひとつ挟まっていたそこを払うように叩いて、僕は心の中でアナグマを描く。今日の僕は、ハッフルパフなのだ。レイブンクローではなく、ハッフルパフなのだ。


「サミュエルっ」


ニナがそう願うのだから、僕はきっとハッフルパフになれるに違いない。
踵を鳴らして駆けてきたニナが、視界の端から現れる。彼女の靴紐は首を傾げるように傾いていたが、彼女は今にも踏んづけてしまいそうなそれよりも首もとにある何かの仮面が気になるらしい。走る度に揺れるそれをおさえながら、ニナは僕に手を振る。目元だけを覆うだろうその仮面は、黒い毛を持ったアナグマらしかった。


「ご、ごめんね、待った?」

「ううん、待ってないよ。僕、寝坊しちゃって、今来たんだ」

「そう、そうなの、私はね、起きたのにね、起きたのに遅れたわ」


一体全体何があったのだろうか。ニナはまるで誰かに時間を盗まれたかのような不思議そうな顔をして、僕が伸ばした腕の中にやってくる。
ニナの足取りのように弾んだ息が、口から吐き出される度に白く光る。イースターを過ぎても空気だけはまだ冬のままで、ニナの頬をつつくように撫でていた。それに気付いて僕はニナの頬を両手で包む。ニナはひとつ、ふたつと息をついて、それから僕の手に指先を重ね、くしゃりと笑った。
ほろりと、胸に甘い何かがこぼれる。これをマクゴナガルが味わえないのは、とても残念だ。


「サミュエルの手、あったかいのね」

「今だけだよ。直にニナの方が僕の手なんかより温かくなるよ」

「そう?それなら、次は私ね、私があっためてあげるからね」


ニナはそう言うなり僕の手を離し、袖をつまんで歩き出す。手を繋いでくれればいいのに、とは思ったが、それを自分から言うのはとても恥ずかしいことに思えて、僕は何も言わずにニナの後ろ姿を眺めた。
花の刺繍がされたワンピースの裾が、歩く度に揺れている。ラベンダーをそのまま布にしたかのようなその服はニナのダークブラウンの髪を色濃く見せて、とても素敵だった。母さんが、好きそうな服だ。
けれど、そのずっと下ではちらちらと、ニナの靴紐が首を傾げて揺れている。時おりニナの爪先がそれを蹴飛ばすので、僕は今にもニナがそれに捕まって転んでしまうのではないかと気が気じゃなかった。
とうとう僕がニナの手を掴んで立ち止まらせたのは、ニナの爪先がそれを踏んづけた時のことだった。


「ニナ、待って」


真っ直ぐ、踊るような足取りで競技場に向かっていたニナの手を引いて、僕は彼女の前に出る。それからその場にしゃがみこんで、蹴飛ばされ、踏んづけられて少し汚れてしまった靴紐を結び直せば、あ、とニナが思いだしたかのような声を僕の頭に落とした。


「きつくない?」

「うん、うん。平気。ありがとう、サミュエル」

「うん、大したことじゃないよ」

「……サミュエルが結べば、とっても良い子だわ」

「良い子?ああ、真っ直ぐってことか」

「そう、真っ直ぐ。私が結ぶとね、曲がるの、首がね、曲がっちゃうの」


靴紐を絞めて、ニナを見上げる。腰を折り曲げて僕の手元を覗きこんでいたニナの長いダークブラウンの髪が僕の鼻先を撫でるところまで降りてきていて、僕はそれをうっかり口にいれてしまわないようにそっと手で避けた。
柔らかなダークブラウンが指先から離れれば、ニナは折り曲げていた腰を真っ直ぐにする。それに引っ張られるように僕も立ち上がれば、ニナは腰を真っ直ぐを通り越して後ろに反らせたのだろう。からん、と何かが気の抜けた軽い音を立てて、地面に落っこちる。


「あ、」


僕がそれを確かめるより早く、それを慌てて拾い上げたのはニナだった。
ニナはその場にしゃがみこみ、落ちたそれを隠すように胸元に押し付ける。僕からはニナの長い髪と旋毛と、それから地面に今にも足を下ろして根をはりだしてしまいそうなワンピースの裾が見えるだけで、ニナが拾い上げたそれは視界を掠りさえもしない。それでも、思わず喉の奥にあった息が重くなったのは、ニナが眉を下げて僕を振り返ったからだ。
短い前髪の下で、ニナの眉が下がっていく。小さな口が一度だけ開いたけれど、そこから言葉がこぼれることはない。言いたくても、言えないことがあるのだ。
そして、ニナが言いたくて言えないことを、僕は分かっている。


「……ニナ、どうしたの?」

「…………あの、あのね、私、ニコラス先輩にね、アナグマを貰ったのよ」

「うん。とっても似合ってるよ。いや、どうだろう。似合わないことはないよ。そのアナグマの毛が黒くなければな、とは思うけれど」

「ありがとう、でもね、私、」


首もとにあるアナグマを撫でて、ニナはしゃがみこんだまま地面を眺める。その目はそのまま地面を這って、僕の爪先を上り、そしてまた僕を見る。僕はただ黙って、ニナを見た。旋毛を見て、それからワンピースの裾を見た。
ワンピースの裾の花の刺繍が、根をはろうと地面に向かっているのを、僕は見た気がした。


「旗を、貰ったの、小さくて、可愛いのよ。ハッフルパフの、カナリアイエローの、三角なの」


僕を窺うように、ニナは言葉を区切りながら周りに落としていく。短いそれらは僕を見上げて首を傾げるが、僕は何も言わず、ニナを見つめていた。ニナのダークブラウンの瞳が、溶けてしまいそうなほど潤んでいる。
ニナが言ったカナリアイエローの三角が、ニナの肩越しに見え隠れしている。それに気付かないニナは僕を見上げたまま、また首もとのアナグマを撫でた。僕はそれを見て、やはりニナには似合わないのではないかとぼんやりと考える。鼻から上だけのそのアナグマは、ニナには少しも似合わない。ニコラス・テイラー・ブラウン先輩は優しげで人に好まれそうな見た目のわりに、がさつで人の気も知らないような兄さんよりもニナに似合うものを思い付かないのだ。僕は、兄さんがクリスマスにニナに贈った花の髪飾りだけは、認めていた。
僕は、それだけしか、認められていないのだ。


「あの、ね、旗をね、三本、貰ったの、だからね、だから私、」


兄さんと仲良くすることは、僕には出来ない。僕の手には有り余る大きくて煌めくそれを片手で捕まえてしまえるような兄さんを、羨まずにはいられないからだ。人を笑わせ、惹き付けることを、酷く簡単な魔法かのように感じる兄さんに、それを出来ない僕が感じるのは劣等感以外の何者でもなかった。嫌いなのかと問われれば、僕は曖昧に頷くしかないだろう。けれどそれはもっと複雑で、重くて、絡まっていて、汚ならしいものなのだ。
それでも家族だから、兄さんだから、僕は耐えられる。初めから、諦めだってついている。血の繋がりは決して消えないし、消せないのだ。そういうものだと諦めて蓋をしてしまえば、僕は何も見なくて済む。兄さんもまた、僕を気遣いその蓋を無理には壊そうとしないのだから。
けれど、彼は、兄さんではない。


「私、ガーランドも、一緒に、」


ヒュー・ガーランドは、兄さんではない。
僕が蓋をしようとしても、彼はそれを燃やして、貫いて、僕に襲いかかるのだ。


「ねえ、ニナ」


すっかり地面に下りてしまった花の刺繍に、ニナは気付かずしゃがみこんでいる。そしてニナは僕が言おうとしている言葉にも気付かずに、僕の言葉を大人しく待っている。
喉の奥で息が震えて、やっぱり止めてしまおうかと思った。きっと、またニナを泣かせてしまう。僕はもう充分過ぎるくらいには、ニナを泣かせてしまった。
それなのに、どうして僕の喉はそれを吐き出そうと震えるのだろう。


「僕は、ニナと二人で、試合が観たいな」

「うん、ありがとう、でも、旗がね、三本あるから、」

「それならニナが二本使うと良いよ。次の試合の時に、そのうちの一本をマクゴナガルにあげよう」

「ああ、でもね、サミュエル、ねえ、」

「嫌だよ、僕は嫌だ、ニナ、絶対に嫌だからね」


絶対に、嫌だ。
ゆっくりと、重たい声でそう言えば、ニナはたちまち目を丸くして、とうとうその場に座り込んでしまった。きっと、根をはりたがっていた花の刺繍がニナを引っ張ったのだし、そして僕の拒絶がニナを突き飛ばしたのだろう。
手を差し伸べようとして、僕はその時初めて喉の奥だけでなく、自分の手が震えていることに気が付いた。深く息を吐けばどうにかそれはおさまったけれど、何故だか胸のあたりに血が集まって、ざわついている。
兄さんが僕のこれを癇癪だと呼んでいることを、僕はまだ知らなかった。


「……ど、どうして?」

「…………ニナこそ、どうして?どうしてそんなにあいつに構おうとするの?どうしてあいつなの?僕がいるのに、どうして?マクゴナガルだって、いるのに、どうして?あいつなんかの、何が良いの?僕には分からない」

「さ、サミュエル、待って、待って」

「あいつは他に友人がいるじゃないか、ニナがならなくったって、僕がならなくったって、別に平気なんだ。そうだよ、平気なんだ。あいつは何だって平気なんだ。僕を、弱虫呼ばわりしたって、平気なんだ!ニナだって傷付けられるに決まってる!」


あ、と言う顔をしたのは、ニナだけではない。
慌てて、僕は口を押さえる。ニナが驚いたように瞬きをして、目の前にいるのは本当に僕なのかと確かめているが、それこそ僕が確かめたいことだった。
胸のあたりに集まっていた血が、熱を道連れに足早に去っていく。頭の天辺から冷えていくのを感じて、僕はニナから目を反らした。
口から出た言葉は、今まで一度だって考えたことのなかったものだった。欠片をつまむことも、覗くこともしたことがない、初めて見る言葉だった。けれど、今のは間違いだったのだとそれを否定する言葉が奥歯に貼り付いて出てこやしない。これはきっと、僕の本音だったのだ。
僕はただ、仲良くなれそうにもないだとか、それよりももっと、気にしていたのだ。弱虫だと言われた僕のように、ニナが何か言われやしないかと。


「……ご、めん、僕、」


こんなことを言うつもりではなかったのだと、言葉が続かない。それでもニナは地面に座り込んだまま僕に手を伸ばして、僕のカーディガンの裾を捕まえた。
泣きそうなくらい下がったニナの眉に、僕はとうとう言葉を失って、何も言えなかった。


「……ごめん、ごめんなさい、私、サミュエルと、喧嘩なんてしたくない。だから、許してね。どうか、私を許して、手を握って欲しいの」


あまりに頭が冷えきってしまって、頷くことも出来ない。それでも、手を下ろすことはどうにか出来た。
ニナは心底安心したかのように僕の手を握り、僕も恐る恐る力を込める。ニナの手は春のように柔らかな温かさで、つい先程まで話していた何でもないことが酷く霞んで見えて、僕は泣きたくなってしまった。
そんな僕の手をニナは小さな白い手で包んで、温めてくれる。何も無かったのだとでも言うように、目を細めて笑って、僕の手を大事そうに額に当てていた。


「私、サミュエルのこと、サミュエルがね、とっても好きよ。知ってる?」

「………………僕も」

「うん、うん。ありがとう、サミュエル、ありがとう」


ダークブラウンの目を細めて、ニナは笑う。ワンピースの裾を払いながら立ち上がったニナはそのまま僕の手を握りこむように繋いで、それからカナリアイエローの三角の旗を一本僕に握らせた。
ニナを見れば、ニナは僕を見る。そして首を傾げて、前髪を揺らし、カナリアイエローを揺らし、最後に繋いだ手を確かめるように持ち上げた。僕はそれに何も言えず、小さく笑い返すことしか出来なかった。

その日、メイフィールド兄弟は散々だったと、誰が思うだろう。全校生徒の真ん中で四百点差で負けた兄さんはともかくとして、僕の胸のうちを事細かく知っているのは僕だけだった。
そして、そんな僕もまた知らないのだ。ニナの花の刺繍が根をはっていたその時、ヒュー・ガーランドがひとり唇を噛んで木の上に座っていたことを。


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