気づかないフリが得意な僕は

「おはようございます、沢田先輩」

最近は毎朝聞いている声に、オレは欠伸をかみ殺しながら振り返った。
なまえは一瞬驚いたような顔をしてから、小さく吹き出した。

「…笑うなよ」
「す、すみません…。でもちょっと…予想外にインパクトのある顔だったもので…」

申し訳なさそうな表情をしているが、その肩は相変わらず震えている。
ジト目で睨んだが、全く効果はなかった。

「…なまえ、昨日体育でサボってて校庭走らされてただろ」
「! な、何で知ってるんですか!?」

慌てたような表情に、思わずこっちにも笑みが浮かんだ。

「端っこの方で友達と話してたもんなー。そりゃ怒られるよ」
「え!? ちょ、えぇぇ…」

何で知ってるんですか……と両手で顔を覆うなまえ。

「昨日席替えして窓際になったから、校庭がよく見えるんだよ」
「…外なんか見てないで、授業は真面目に受けるべきだと思います」
「…なまえには言われたくないけど」

くっ、と悔しそうな表情を浮かべて黙り込んだなまえ。これは初めて見る表情だ、と。

「…大体昼休みのあとに体育の授業があることがおかしいです」
「それはオレも思うよ」

……それが嬉しい、なんて錯覚だ。

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