笑顔が一番美しい

なまえは、廊下で会っても挨拶をするだけですれ違うことが多い。お互い教室移動だったりで、話している時間がないからというのが理由なんだろうけど。アピールするといった割にはまるで普通の先輩後輩みたいだと思った。
だがその代わり、よく登校中に声をかけられるようになった。

でもその日は珍しく、昼休みに廊下でなまえを見かけた。彼女は重たそうな荷物を持ってフラついていた。

「大丈夫?」
「え?」

振り向いたなまえはオレを見て驚いたような顔をした。

「さ、沢田先輩…こんにちは」
「どうしたんだよ、その大荷物」
「先生に頼まれちゃって」

困ったように笑ったなまえは両腕いっぱいに資料やノートを抱えていて、見るからに大変そうだ。女子一人にこんな荷物持たせるなんて。

「大変だろ、手伝うよ」

ひょい、となまえの手から荷物を半分ほど取り上げる。するとなまえは慌てたように言った。

「だ、大丈夫です! 先輩に迷惑かけられないですし…」
「こんくらい迷惑じゃないって」
「で、でも…」
「いいから。で、どこに運ぶの?」

うぅ…と唸っていたなまえだが、すぐに諦めたようで、申し訳なさそうな顔をした。

「…ありがとうございます。社会科準備室です」
「分かった」

オレが歩き出すと、なまえも小走りで後ろをついて来た。

目的の準備室に着くと、なまえは手際よく資料をしまっていく。オレはそれをぼーっと眺めていた。
ものの数分でそれを片付け終えた彼女は、座っていたオレの方を振り向いた。

「手伝ってくださってありがとうございます」
「いや別に半分運んだだけだし…」
「いえ、重かったので…助かりました」

そう言って、なまえは笑った。少しだけ、心臓が跳ねた。……オレは単純だ。

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