長編 白 | ナノ




リーという男










あるところに、木ノ葉エレクトリックという会社がありました。
その会社は世界をまたにかけ、様々な事業を展開し、利益を上げています。
その中の一つ。アミューズメント業の支社でのお話し。
一人の男が、意地悪い女の人に、いびられている所から始まります。


ーーーーーー









「はぁ?だから私は知らないんですけどー」

ここは経理課。
女は自分の椅子に座り、髪の毛を指でくるくると弄っている。

「いや、課長からの伝言を僕はちゃんと伝えました。11時までにこの資料を印刷しておくようにと」

この男、ロック・リーは立ち上がり、女に言い返す。

事の発端は、課長の伝言から始まる。伝言を受けたリーは、すぐにその事を女に伝えたのだが、事もあろうかその女は資料を印刷しなかったのである。
その事を後になって知らされたリーは、慌てて印刷し、会議室にいる課長に持って行った。
あとで女に聞くと、女は知らないと答え、しらを切る。

「なにそれ。そうやって私を悪者扱いするワケ?むかつくんですけど」

「悪者扱いはしていないです。ただ、伝言を伝えたのに貴女が嘘をつくからこんなことになってるんですよ」

リーが言い返すと、女はため息をつく。

「本当に女々しいわねー。毎月休むし。本当、男のオメガなんて必要かしら」

「っ!」

リーは眉間にシワを寄せた。
この世の人間は3パターンに分かれる。
アルファ、ベータ、オメガ。
アルファはヒエラルキーの頂点に立つ人種で、知力体力に非常に長ける。簡単に言うとエリート達である。
その次はベータ。地球上に一番多く存在。知力体力は良くも悪くも普通。
その下がオメガである。知力体力共にベータと同じなのだが、一つ変わったことがあった。女、男であろうが出産能力があることで、月一回の生理もある。
リーは、毎月来る生理が重く、酷いときには起き上がれないほど。一度無理して会社に来たのは良いが、職務中に倒れたことがある。
それから課長からリーに、月に3日の生理休暇を言い渡した。
勿論その月の生理がたまたま我慢できるものならば出社し、働く。
「毎月休む」女はその事を言っていた。

「大体なんなのよ。男なのに生理って。よくこの会社に入れたわね。コネ?あ、でもオメガって偉い偉いアルファ様とくっつくんでしょ?いいご身分だこと。でも、そしたら貴方が子供産生むんだから、産休?あっ、寿退社かー」

その言葉にリーはなにも言い返せなかった。ある意味事実だからだ。

「ちょっと」

横から別の女の声が聞こえた。

「さっきから聞いてりゃなんなの?オメガだろうがベータだろうが、あんたには関係ないでしょ?」

同僚のテンテンが女を睨む。

「あーあー。出てきたよ。リーの子守りが。ベータなのに勿体無いわねー。オメガなんか庇う価値ある?貴女とは言い合う気無いわよ。じゃあね、私仕事があるの」

女のはそう言ってパソコンに向かった。
リーは椅子に座る。
隣の席のテンテンは、リーの肩をぽんっと触る。

「……大丈夫?」

その問いにリーは頷く。

「テンテン。いつもこんな僕に、ありがとうございます」

「別にいいよ、そんなの」

リーはそろそろと電卓を触る。
仕事をしなければ。
リーが仕事を始める。
その様子を見て、テンテンも自分の仕事へと戻った。





ーーーーー






残業が終わり、駅から歩いて帰る。
車のライトや店の明かり、街頭が道を照らす。
すると、見知った人物が本屋から出てきた。

「おっ、ゲジマユ!」

「…ナルトくん!」

ナルトはジーパンにシャツという、ラフな格好をしており、手には先程買ったと見られる紙袋が握られている。

「へへ、これ写真集」

ナルトが照れ臭そうに言うと、リーの表情が明るくなる。

「ああ、ヒナタさんのですか!」

ヒナタはファッションモデルで、そのうつむきな表情と、魅せる笑顔が特徴的なモデルだった。
決して売れっ子モデルではないが、着実にそのキャリアを積み、初の写真集を出すまでになってた。

「ナルト君の好きな人、ですよね」

リーがニカッと笑うと、ナルトは顔を赤らめる。

「ま、まぁな!とりあえず、一杯どうだ?」

「良いですね。行きましょう!」

ナルトとは同郷で、幼馴染みだった。
小さい頃から一緒に遊び、一緒の学校に言っていた。
そして気がついたら、部署は違うが同じ会社にいた。今日はたまたま休みだったらしい。
すると、前からメガホンで何かを言っている声がした。

「オメガ!反対!我々は、オメガを人とは認めない!!」

十数人が集団となって歩道を歩いている。
デモだ。
リーは少し嫌な顔をした。

(……オメガが何をしたっていうんだ)

ナルトはじっとデモ隊を見たあと、リーの手を取った。

「行こうぜ。俺、あーゆーの嫌いだってばよ」

「え?わっ」

ナルトはリーの腕を引き、ずんずんと進んでいく。
それは路地ではなく、デモ隊に向かって。

「え、ナルトくん!」

そしてナルトはデモ隊を睨み付け、そのまま隊の真ん中を突っ切っていった。

「何だ君達は!」

男の人の怒号が浴びせられる。
ナルトはその男を睨み付けた。

「てめぇらが嫌いなオメガだよ!歩道いっぱいに広がんなよ、邪魔だな!!」

そう言ってナルトは走り出す。
デモ隊は怒ったが、まわりの人がこちらを見ていたので、なにも出来ないでその背を見送った。






「はー!疲れた!」

「はぁっ、よくあんな無茶を」

走りに走った二人は、あっという間に自宅マンションに着いていた。
上に向かうエレベーターの中で、二人は笑う。

「無茶じゃねーよ!あいつら何様だよ!いつも偉そうな事言いやがってよ!」

「だからってあんな嘘…」

「ん?別にいいよ。同じ人間じゃねーか」

ナルトはオメガでは無かった。アルファなのだが、何処か変わっていて体力以外は平均並みだった。
故にエリート街道を進まずに、人並みの生活を送っている。
同じアルファには、「アルファの落ちこぼれ」と悪口を言われる事もあった。

「…ナルト君らしいですね!」

そう言って、もうすぐ目的の階で止まるだろうエレベーターの中で、二人は笑ったのだった。









つづく。








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