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林檎(カカイル)








(参った…………)

自宅。イルカは目の前のりんごを見てそう思った。
りんごは4個……に、やっとなった。
一週間前、たまたま林檎農家の所に任務に行ったイルカだったが、帰り際にお礼にと、たんまり林檎をもらった。
段ボールにいっぱい入った林檎…食べきれる訳なく、大部分は、近所へのお裾分けにした。
残りの10個から6個食べ、残り4個。

「もう向こう1年くらいは林檎はいいな……」


イルカはこの残った林檎をどうしたものかと考えた。

(ジャム?うーん…しっくりこないな)

するとふと見た雑誌の見出しに、「夏にさっぱりのケーキ!」と書かれていた。

「これだ!!」

イルカは林檎のケーキを作ることにした。
そうとなれば話は早い。
材料なら揃っている。
イルカは立ち上がり、キッチンへと向かった。






手を石鹸でよく洗う。
指の間も、手首も、爪の隙間も。
水でよく洗い流したら、清潔なタオルで手を拭う。

「よーーし!」

まずは林檎を1つ。
薄切りに。皮も丁寧に向いていく。

(それにしても、久しぶりにお菓子なんて作ったな……)

いつだったかナルトにプリンを作ったことがある。
うまいうまいと、ナルトは五個あったプリンを全て平らげてしまった。

(もう久しく作ってないな……)

そんなことをぼんやりと思い出しながら、イルカは笑った。
林檎が切れたら、バターと砂糖。
フライパンにバターと砂糖をいれ、カラメルを作る。
甘いバターの香り。
クツクツと煮込み、良い色加減になったら、一旦火を止め、そこにさっきから薄切りにした林檎を円状に並べていく。
並べ終わったら弱火で10分。

(カカシさんと最後に会ったの、いつだっけ……)

覚えていない。
アカデミーでチラッと見かけるが、お互い忙しくまともに話せていない。
4月だったか?なんて一人考えていると、タイマーが鳴った。
もう10分経ったのかとイルカは思い、菜箸を手に取る。
そして並べた林檎の端をそっと持ち上げ、焼き具合を見る。
林檎は茶色い半透明になっており、焼き色がしっかりついていた。

「よしよし…あー!」

そこで思い出す。

(生地作るの忘れてた!)

イルカは慌てて火を止め、フライパンを濡れ布巾の上においた。
冷蔵庫から卵とホットケーキミックス、牛乳を取り出した。

ボウルに卵を1つ割り、牛乳を少量加える。
本当は泡立て機が必要なのだが、そんなものは無い。
イルカは菜箸で混ぜ合わせ、そこにホットケーキミックスを100g加えた。
菜箸からゴムベラに持ち変え、さっくりと混ぜ合わせる。
粉が舞ってしまわないように、さっくりと。
混ぜ終わり、イルカはフライパンをコンロに置く。
そして林檎の上に先程の生地をそーっと流し込んだ。
林檎の上にまんべんなくかける。
流し終わったら蓋をし、再び弱火で10分。
タイマーをセット。
何のテクニックも要らない、簡単なケーキ。
ホッと息もつく間もなく、イルカは服を漁った。
人に会うときは、こんな部屋着ではない服に着替えなければ。

適当に服を引っ張り出してきたイルカがそれに着替え終えた時、丁度タイマーが鳴った。
蓋を開ければ、そこにはふっくらした生地が。
だが油断は大敵。
菜箸で生地を刺してみる。

(よしよし、よく焼けてるな)

イルカは見映えの良い皿を用意し、フライパンを持つ。

「…せーのっ」

フライパンを皿に勢いよくひっくり返した。
ケーキは綺麗に皿に乗る…………予定だった。

「あー!」

砂糖がフライパンにくっついていたからか、ケーキが崩れた。
イルカは菜箸でなんとか形を整える。
何とか整え終え、ラップを手にかけた。

「………………」

が、そのラップを再び置いて、もう一枚皿を用意した。






ーーーーーーーーー







「またな、カカシ」

そうアスマに言われ、カカシはひらひらと手を振った。
夕暮れの帰り道。
なんて事はないが、カカシは心細かった。

(はぁ、イルカ先生……)

もうだいぶ会ってない。
家に行こうにも、アスナは教えてくれないので、行くことが出来ずにいた。

(ここのところ忙しかったからなー)

とぼとぼと帰路につく。
カカシが自分の家を見ると、自分の家の前に誰かが座り込んでいた。

(あれって……)

カカシは走った。
ふわりと浮いたような感覚だった。

(見間違いでなければあの人は……)

直ぐに家の前までついた。
座り込んでた人物は驚いた顔でカカシを見上げる。

「イルカ先生…」

「カカシさん…」

どうして俺の家が分かったの。
そう言うつもりだったが、イルカが勢いよく立ち上がったので、言えなかった。

「あの!すいません、いきなり…林檎のケーキ作ったので、良かったらどうですか?」

「ケーキ…」

「ああ、いや、その、苦手でした?」

「いや。そうじゃなくて…どうして俺の家って分かったのかなって」

イルカは照れ臭そうに答える。

「やだな。ちょっと前に教えてくれたじゃないですか」

「俺が?」

「小さい紙に住所と地図、アスマさんに俺に渡すように頼みましたよね?」

なるほど。
カカシは理解し、明日アスマをとっちめてやろうと決めた。

「そうでした。…ま、ここじゃなんだし中入りませんか、コーヒー淹れますよ」

「わあ!いいんですか!?お邪魔します」

うきうき、わくわく。
こんな気持ちは、久しぶりだった。

(しかもイルカ先生の手作りケーキ)






(しばらく会えなくても、こんなに嬉しい気持ちになるなら、それも良いかもしれない)






Fin





おまけ

「あれ、りんごケーキ半分なんですね」

「そうなんですよー。もう半分はナルトにあげました」

「………イルカセンセ、次から俺の為だけに作ってね」






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