暁 | ナノ




バラバラエアコン






「あぢーーーー」

黒のタンクトップ姿のデイダラは、団扇片手に床にのびていた。
それもそのはず、気温は38度。
さらにアジトの室温は40度に達していた。

「どっかの馬鹿がクーラー壊すから、こんなことになったんだぞ」

デイダラが同じく床にへばっている飛段を睨み付ける。

「うるせー。悪いって言ってんだろうが」

飛段は最早パンツ1枚のみ。汗だくになりながら答えた。
今、アジトにはデイダラと飛段のみ。
クーラーが壊れた原因は飛段にあった。

「普通エアコン分解するかよ」

デイダラは汗をぬぐい、起き上がった。

「だってよー。ゴキブリがいるかもしんねーんだぞ!?怖いじゃねーか!」

「男で怖がるなんざお前だけだぞ、うん」

「なんだと!?」

二人でギャーギャー騒いでいると、誰かが帰ってくる音がした。

「いやはや、何ですかこれは」

「げ!鬼鮫!とイタチ!」

「お!鮫ちゃん達!良いところに!」

「…暑いな」

鬼鮫とイタチはバラバラになったエアコンを見て、そりゃ暑い訳だと納得した。
鬼鮫とイタチはとりあえずコートを脱ぐ。
そこにすり寄ってきたのが飛段である。

「なぁーー、鮫ちゃーん。水遁してくれよう。なぁ、冷たいやつがいいな!」

飛段は猫なで声を出す。
強情な角都にお願いするときこの声を出すと、大抵通る。
それを心得ている飛段は思い切り猫なで声を出した。
後ろでは、デイダラがそんな飛段を見て吐き真似をしている。

「あのねぇ、アナタ、角都が帰ってきたらどうするつもりです?バラバラになったエアコン。この間買い換えたばかりでしょう」

「んなこたぁ問題じゃねぇよ。な?水遁、頼むよ〜」

鬼鮫が飛段をたしなめるも、効果無し。
イタチはため息をついて、鬼鮫を見た。

「仕方ない。やってやれ。」

「……………仕方ないですねぇ。イタチさんがそういうなら」

鬼鮫はため息をついた。

「まじで!?やりぃ!デイダラ!行こうぜ!」

お許しが出た飛段は、飛び上がって喜び、デイダラを誘って外へと出ていった。

「あ!ちょっと待て!」

デイダラも同じようにバタバタと出ていった。




ーーーーーーー





その頃、サソリと角都は水隠れの里に来ていた。
ペインからの命令も済ませ、もう帰る所だった。

「お前、熱くないのか」

角都が歩きながらサソリに問う。
傀儡の中はどんなものなのかは大抵予想がつくが、中はサウナ状態では無かろうか思ったからである。

「暑くない。そういうお前さんはどうなんだ?」

「……少し暑い」

これは嘘だった。
角都は昔の夏を思い出す。
当時は気温が30度あれば暑いくらいだった。
なのになんだ、38度とは。
角都は今すぐにでもコートを脱ぎたい気分だった。

「ふぅん………なぁ」

「なんだ」

「あんみつ、食ってこうぜ」

サソリが指差した先には、あんみつ屋。
普段の角都ならば、即座に却下している事だろうが、今の角都にそんな余裕は無かった。
暑い。暑すぎる。

「……………そうだな。こんな猛暑の中、お前に倒れられたら、金がもったいない」

そう言いながらあんみつ屋へと向かう後ろ姿を見ながら、サソリはひとりごちた。

「素直じゃねーの」




ーーーーーーーー





「ひゃー!!つめてえ!!」

アジトの外に川と滝を作って貰った飛段は、我先にと川へと飛び込んでいた。

「よっしゃ!俺もだ!うん!」

ばっちゃーーーん!
デイダラも海パン姿で一気に飛び込む。

「こりゃあ良い!生き返るようだぜ!」

デイダラは冷たい水で顔を洗い、水をぬぐう。
鬼鮫はそんなふたりを見ながら、自分も水着姿に着替えた。

「イタチさんも一緒にどうです?」

「すまん鬼鮫。俺は日焼けしたくないんだ。足だけ浸からせてもらおう」

イタチは炎天下だというのに長袖、サングラス、帽子、首もとのタオル、ビーチパラソルといった出で立ち。
足は川につけれるように、ズボンの裾を折り曲げてある。

「そうですか。では私はイタチさんのおしゃべり相手でもしましょうかね」

鬼鮫はイタチの近くに行き、川へと入った。

「お、気持ちいいな」

イタチがそういうと、鬼鮫は嬉しそうに笑顔になった。

「そう言ってもらえて良かったです」

「これはどういう事だ」

不意に低い声が聞こえ、鬼鮫がイタチの背後を見る。

「あ、角都とサソリ。思ったより早かったですねぇ」





ーーーー






「デイダラちゃーん!次俺な!いくぜー!」


デイダラと飛段は息継ぎなしでどこまで行けるか勝負していた。
デイダラは20mの記録である。
次は飛段の番。

「いいか!?思い切り吸うんだぞ!うん!」

「おうよ!」

飛段はデイダラの助言を受け、思い切り行きを吸い込み、勢いよく泳いだ。

「お!いけ飛段!あと半分だ!!ぐえっ!!」

デイダラは黒いなにかに拘束され、川から引きずり出された。

「何すんだよ!!あっ…………」

振り返った事を、この時ばかりは後悔したデイダラであった。






水の中は冷たくて気持ちが良い。
飛段はこの息継ぎ無しレースの勝利を確信していた。
全く苦しくないからである。

(くくく、俺これ得意なんだぜデイダラちゃん。悪いねー)

だが、そんな浮かれた気分は、次の瞬間一気に吹き飛んだ。
あんなに冷たかった水が、瞬時に熱湯に変わったからである。

「あぢい!!!あっつ!!あっつ!!!」

慌てて足をついて川岸へと這い出せば、角都と頭刻苦の姿があった。

「飛段………分かってるよな?」

胸ぐらを捕まれた飛段は、バラバラにしたエアコンの事を思い出した。

「あっ、あーー。あれかー。いや、あれさ、ゴキブリが」

「問答無用」

「ぎゃぁああああああああ!!」

炎天下、死なない男の断末魔が響いた。







Fin

おまけ
エアコンはサソリに直してもらいました。






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