■いっぱい食べる君が好き(角飛)
ここは高級中華料理店。
連日セレブなどで賑わう店の一角に、貸し切りの部屋が。
そこでは、たった二人だけの食事が行われていた。
「うん………旨いっ」
飛段はエビチリを頬張る。
ぷりぷりな海老に、ケチャップが効いた餡が口一杯に広がる。
あっという間に無くなり、次の料理へと向かう。
中華スープはフワフワな卵、胡麻と、塩加減が絶妙に合わさっている。
酢豚といえば、豚がカリカリに揚げられていて酢が効いた餡が最高のもの。
揚げ餃子は、カリッカリに揚げられた皮の中に、とろりとした肉と野菜が詰められている。ニラの香り良く、食欲が掻き立てられる。
フカヒレの姿煮は、鬼鮫を思い出しながら食べた。味は良くわからなかったが、触感がこりこりしてて旨い。
そしてご飯。天津飯だ。
餡に包まれた薄焼き卵の下に、中華の元が効いたチャーハンが丸くおさまっている。レンゲを使い崩せば、ほろりとバラける。頬にぱんぱんに詰めながら頬張った。
中華と言えばこれ、麻婆豆腐である。
中国四川の麻婆豆腐は、想像通り見た目も赤く、食べた瞬間火を吹きそうなくらい辛かった。だが、味噌の深みのある味や、肉の旨味がぎゅっとつまっているのが分かる。豆腐も旨く、綺麗に完食した。
そんな中華の中に、1つだけ洋食が……スペアリブだ。
飛段が骨をつかんでかぶりつく。
すると、肉はすぐに切れた。普通の肉と、今回の熟成肉だと格段に旨味が違っている。まず柔らかさが違う。歯を必要としない位やわらかい物。
「うめぇー」
肉汁は塩コショウと油を含み、さらに肉の旨味が染み出ている。肉の味は、塩コショウの下味がしっかりついたもので、さらにハーブの様な香りもする。
飛段は綺麗に食べ終わると、骨を皿に置いた。
「はぁっ!うまかった!」
飛段は腹を撫でながら、満足そうにそういった。
中華テーブルの向かいに座っていた角都は、頬杖をつきながら答える。
「それは良かったな……杏仁豆腐は食うか?」
「食う!」
飛段が目を輝かせる。
角都が近くにいたボーイに言うと、程なくして杏仁豆腐が飛段の前に出された。
冷えて白く艶々した杏仁豆腐の上に、赤い杏仁がポツリと乗っている。
一口食べると、ほどよい甘さと濃い杏仁の味が広がる。
「うん!旨い!」
これもあっという間に平らげる。
「もう食えねぇ……」
飛段は烏龍茶を飲みながら言う。
角都は少し微笑み、そうか、と呟いた。
Fin