■うまい飯の後は君(ガイリ)
「はい!天津飯に全マシ豚骨ネ!」
少しふくよかなおじさんが持ってきた天津飯と、野菜やチャーシューがたっぷりのった、とんこつラーメンがリーの目の前に並ぶ。
「こっちのお客さん、餃子と八宝菜と四川チャーハンネ!」
ガイの目の前には餃子10個がのった皿と、海老やウズラなど、様々な具が入った八宝菜。いかにも辛そうな色のチャーハンな並んだ。
満員に近い店内で、カウンターに座っているリーとガイは、運んできたおじさんに礼を言った後、「いただきます!」と大きな声で言った。
どうしてこの中華屋に来ているかと言うと、ガイに臨時収入があったからだ。
久しぶりに皆で飯でも食うかと、ネジとテンテンも誘ったのだが、二人は何か用事があるらしい。
リーを誘ったら「良いんですか?」と目をキラキラさせていたのが、今から数時間前の事だった。
リーはレンゲでラーメンのスープをすくう。
豚骨。乳白色のスープを見れば、油と塩コショウが舞っている。熱々なので、息を吹き掛け、少し冷ましてから一口飲んだ。
「…………っうまい!」
そんなリーの反応を横目で見ていたガイがにんまり笑った。
「そうだろう。ここは、俺のお気に入りの店でな。連日満員なんだぞー」
ガイは食べ慣れた天津飯を口に運ぶ。
いつ食べてもうまい。
リーは、ずるずると麺をすすった。
ぱつぱつとした歯切れが良い細麺、コリコリ歯ごたえがあって味が染みてるメンマ、豚の油が甘いチャーシュー、その油を中和してくれている様な野菜達。そしてそれらをまとめる、豚の味染みてる調味料が効いたスープ。
リーは夢中になってすする。
「すごい美味しいです!ガイ先生!」
ほっぺたをラーメンで膨らませながらガイに言う。
それを聞いていた店主が、「坊主」と声をかけた。
「良い食べっぷりだ!ほら、チャーシューおまけだ!」
リーの器に分厚いチャーシューを乗っける。
スープとチャーシューの脂身がぶるっと揺れた。
「えっ!いいんですか!?」
「当たり前だ。食ってけ」
「ありがとうございます!」
リーはお礼を言ってチャーシューにがっついた。
ガイは店主に改めてお礼を言い、自分もうまい八宝菜を口に運ぶ。
「リー、あのな」
「何ですか、ガイ先生」
ガイは口のなかのウズラを舌でころころ転がしながら、おずおずと切り出した。
「あー、えーと、その今夜暇か?」
「今夜ですか?」
「そうだ。つまり…飯を食べ終わった後、だ」
リーは目線を上に向け、このあと何かあったのか思い返す。
特に思い当たることはない。
ガイに目線を向け直し、頷いた。
「特には予定ないので、お付き合いしますよ!ガイ先生!」
「……そうか!」
ガイは胸を撫で下ろした。
そしてチンゲン菜を口に運びながら想像する。
薄暗い部屋で乱れるリー。甘い声で自分を呼ぶ唇。
「美味しい!美味しいです!」
うまいうまいと言いながら食べるリーを見て、ガイはクスリと笑い、自分も勢い良く八宝菜をかきこむ。
全てはこのあとの為に。
Fin