ガイ班 | ナノ




落下(ガイリ)






「ん、ガイ。アスマ達と今から飲みに行くんだけど、どうだ、お前も一杯」

夕方、不意に声をかけられた。
声の主は、俺の永遠のライバル。はたけカカシ。
いつもなら行く!と意気込む所なんだが、俺は断った。

「すまんな、カカシ。今日は用事があるんだ」

カカシはしばらく俺を見る。

「あ、そう。頑張りなさいよ」

カカシはそれだけ言い、部屋から出ていった。
全て理解したという顔。
そう、今日は無理なんだ。
俺はすぐさま鏡の前に立ち、髪が乱れてないか確認する。
よーーーし、バッチリだ。
おっと、例のやつを忘れたらいけない。
それをしっかりと内ポケットへと入れる。
俺は外に出て、一目散に花屋に向かう。
折角だ、アスナの教え子の花屋に行こう。

「あの、花束をひとつ作ってもらいたいんだが…」

「おっ!ガイ先生!なに、女でもできたか?」

「はは、そんなとこかな?」

「よーし、なら薔薇を2本おまけでつけとくよ!」

「おう!ありがとう!!」

そんなやり取りをし、作って貰った花束は虹色だった。
黄、赤、青、紫…様々な色の花。
お金を払い、ふと時計を見ると、約束の時間だった。
やばい。急がねば。

花を散らさないように走る。とても神経を使うので、いつもより遅くなってしまった。
火影岩の上の木陰。それが毎年俺達の集合場所だった。

ようやく来てみれば、そこには誰も居なかった。
時計を見ると、午後6時4分。4分遅れだった。

「リー…?」

俺の恋人、リーの名前を呼んだが、返事がなかった。
今日は6年目の付き合った記念日。
毎年、ささやかながらもここで過ごしてきた。
もちろん任務が被った日もあったが、後日ここで過ごした。
そんなリーが、いない。
おかしい。今日は任務もないはずだ。
一昨日そう言っていた。
ならば、何で、何故。

「フラれたか…リーの身に何かあったか……」

「僕がどうかしましたか?」

背後から声がした。驚きすぎて飛び上がってしまった。
振り替えるといつものリーがそこにいた。

「すいません。遅れてしまって…待たせてしまいましたね」

「い、いや、別にいいんだ。良かった……来てくれて」


俺は胸を撫で下ろし、リーに対して膝まづく。

「え!どうしたんですか先生!」

俺は、この瞬間のために何千回、いや、何億回もイメージトレーニングをしてきた。

「リー」

俺は花束を差し出す。

「わ!どうしたんですかコレ!」

リーが花束を持つ。
そして俺はすかさずに内ポケットから例のものが入った小箱を取り出す。
心臓がさっきからうるさい。

「リー、聞いてくれ。俺は」

リーは夕焼けのせいなのか、顔がほんのり赤い。

「俺は、この6年目、凄く待たせて、しまった」

クソ。緊張して、うまく話せない。

「リーは、いつも、俺を支えてくれた。いつも俺の側に、いれくれた」

ええい、マイト・ガイ、男だろ!
しっかり決めろ!

「俺はリー、お前が好きだ。これからも一緒にいてくれ」

そういって小箱のふたを開ける。
一週間前に届いた指輪が、そこにはあった。
そして、リーは無言でその指輪に触ろうとした時、ビキィ!と音がした。

「?……うわぁ!!」

崩れる、崩れる。
俺の足下が、崩れて落下していく。
その弾みで小箱がどこかに行ってしまった。
落下していく。
落下していく。
リーの表情は、もはや分からなかった。




ーーーーーー





ピピピピピピピピピピピピピッ!

「は!!」

けたたましい音がなる。
俺は一瞬ここがどこだか分からなかった。
起き上がると、よく見知った所だった。
俺の家。
辺りを見回すと、ピピピピと音を出している目覚まし時計。
リーにプロポーズしたあと、どうなった?
何故俺はここに?
テレビをつけると、女のアナウンサーがにっこりと笑っていた。

『おはようございます!7月16日、水曜日です!今日も1日晴れの見通しです。皆さん、日焼け止めをしっかり、塗ってから外出しましょう!さて、今日の見出しはーーーーーーー』

今日が付き合った日………?
理解した。あれば夢だったようだ。
極めつけに、俺は寝間着。
机の上には大量のビールの空き缶。
そうだ、俺は昨日、緊張して酒を飲んだんだ。
ならば、約束の時間まで…………。
時計を見ると、あと12時間を切っていた。
やばいやばい。
さっと今日の任務を片付けなければ。

夢のように遅刻しては敵わん。
俺は支度をしながら、何億回したイメージトレーニングを再びしながら、意気揚々と家を出た。








イメージトレーニングの様にうまく行ったかどうかは、また別の話。







Fin


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