ガイ班 | ナノ




髪の艶(ネジ→テン)





「何で俺がこんな目に……」

晴天の下、ネジはそうつぶやいた。
何故ならテンテンがネジの髪を弄っているからである。

「いーじゃない!ネジの髪さらさらなんだもん」

左手でネジの髪を持ち上げ、右手で持っている櫛を入れ、といていく。
テンテンは関心した。
櫛をいれても、髪のつっかかりが全くない。さらさらでもあるが、本当にストレート。さらにはツヤまであった。

「ねー、ネジ」

「何だ」

「何か髪のお手入れとかしてるの?」

そう聞かれ、ネジは考えた。
特別何かをしている訳では無かったが、心当たりがあった。
いつ頃からかヒナタがくれる様になったトリートメント。
初めに使った時は、とても良い椿の香りがした。何故だかネジは気に入り、使いきる頃にヒナタに、どこに売っているのかを聞いた。
ヒナタは一言、手作りだと明かすと、2ヶ月に1回、このトリートメントをくれるようになった。
…………さらさらなのは、そのせいかもしれない。

「……トリートメント」

「へー!どこの?椿の良い香りがする!」

テンテンはネジの髪に鼻を近づけ、香りを嗅いだ。

「ヒナタ様がくれるトリートメントだ。そういえば………」

「何?」

「俺より、リーの方がツヤツヤなんじゃないか?」

確かに。
テンテンは納得した。
さらさらかは知らないが、同じ班員であるロック・リーの髪はとてもツヤがあり、遠くから見ても分かるほどだ。
かといって油ではない。
あれほどまでに見事なツヤの持ち主はそうそう居ない……少なくとも2人しか知らない。
テンテンは自分の髪のために、ネジはヒナタのために。

「気になる……」

「そうだな…………」

ネジとテンテンはお互いを見た後、一目散にリーの元へと向かった。



ーーーーーーー





「いた!」

テンテンがネジにそう伝える。
ここは商店街。
様々な人が行き交い、賑わっている。
そんな中に全身緑のおかっぱ頭の忍者がいた。
定食屋にあるサンプルの前で悩んでいるようだった。

「うーーーん!天ぷら山菜うどん定食も良いですが、カレーうどん定食も捨てがたい…………」

時刻は丁度12時。
昼時である。

「そういえばもうお昼かぁ。お腹減ったぁ。リーと一緒に食べましょ」

テンテンはリーの方へと歩こうとした時に、ネジに腕を捕まれた。

「待てテンテン。あれを見ろ」

言われた方角、リーのうんと向こうから、これまた全身緑色の男がやって来るのが見えた。
師のマイト・ガイである。
テンテンとネジは見つからないように店の隙間に入り、そっとリーの方を覗いた。

「お!リー!偶然だな!!」

「ガイ先生!!」

ガイに声をかけられたリーは、目を輝かせてガイの方を向いた。

「何だ、さてはカレーうどんか天ぷら山菜うどんかで迷ってるな?」

見事に当てられたリーは、さらに目を輝かせた。

「凄いです!何故わかったんですか?」

それに対してガイは笑う。

「何年お前の師をやってると思ってるんだ。お見通しだ。よーし、ならばお前はカレーうどんだな」

「え?何故ですか?」

「俺が天ぷら山菜うどんを頼もう。………半分子だ」

それを聞いたリーの目に、みるみるうちに涙がたまっていく。

「ガイ先生ェ………」

それに対しガイも、目に涙をためていた。

「リーよ………」

その瞬間、

「ガイ先生!!!」

「リー!!!」


リーとガイは抱き合い、二人で泣いていた。
二人にとってはいつもの光景、いつもの青春である。

「ここ、商店街なんだけど……」

テンテンが小さくつぶやき、ネジはリーとガイを見て呆れていた。
こゆい二人の包容を、行き交う人々はまじまじと見て去っていく。
テンテンとネジは何だか恥ずかしくなり、その場を離れ様とした時、誰かに肩を叩かれた。

「ヒィ!!」

テンテンが声をあげて振り替えると、そこにはヒナタとナルトがいた。

「あっ、ごめんね。驚かせちゃった?」

ヒナタが謝ると、ナルトがニカっと笑う。

「おうネジ!何してるんだってばよぅ!デートか?デートなのか?」

「うるさい!!」

肘で小突かれたネジはナルトの腕を振り払う。
ナルトは心のなかで「否定しないのかよ」とつっこんだ。

「いやー、リーってば髪ツヤツヤでしょ?何でかなって」

テンテンはまだ抱き合っている二人を指差しながら言う。

「うげっ!これまたすげーこゆいってばよ」

ナルトは恐ろしいものを見たかの様に身をすくめた。

「あ!そうだヒナタ!椿のトリートメント作ってるんでしょ?作り方教えてくれない?」

ヒナタは、すぐにネジにあげているトリートメントの事だと分かり、頷いた。

「いいよ。でもこの時期だと椿が咲いてないから、いのちゃんの家で買ってるの。ちょっと値が張っちゃうけど、それでも良い?」

「うんうん!良いよ!ありがとうヒナター!」

テンテンがぎゅっとヒナタを抱き締める。
ネジは何故だかドキッとし、テンテンとヒナタから目をそらした。

「俺らこれから一楽行くんだけど、お前らもどう?」

ナルトがテンテンとネジを誘う。
が、ヒナタから離れたテンテンが断った。

「いやぁ、二人の邪魔したくないし、折角のデート楽しんできてよ!じゃあヒナタ!また連絡するね!ありがとう!」

テンテンはネジの腕を引きながら、リー達がいる方向とは逆に歩き始めた。

「うん!またね」

ヒナタがテンテンに手を振った。

「別にいいのに」

ナルトがそう言い、ヒナタの手をとった。

「一楽いこーぜ!」




ーーーーーーー






ネジが勇気を振り絞ってテンテンに花束を渡す。
赤や白を中心とした花束を。
渡されたテンテンは驚いた顔をし、花束を受け取った後、ネジに抱きついてお礼を言う。
ありがとうと。

「ーージ!ネジ!!!」

「ん!?あ、ああ?」

テンテンに花束を渡すという想像をしていたネジは、テンテンに名前を呼ばれて我に返った。

「もー!どうしたの?さっきからぼーっとしちゃって」

ネジはあたりを見回した。気づけば商店街から離れた、芝生が生えたところにいた。

「いや。なんでもない」

ネジは木陰に入り、腰を下ろす。
テンテンもネジの隣に腰を下ろし、いつの間にか持っていた袋から、中華まんらしきものを2つ取り出した。

「あんまりぼーっとしてるから、中華まん買ってきちゃったよー。はい。水もあるからね」

ネジはテンテンから中華まんを受け取り、一口食べた。

「うまい………」

「あ!わかった!ヒナタがナルトとデートしてるもんだからショックだった?」

「違う」

ネジはバクバクと中華まんを食べていく。
さっきから胸の鼓動がうるさい。

(いつか、テンテンもあんな風に、俺に抱きついてくれるのだろうか……)

そんなことを思いながら、目の前にある中華まんをひたすら食べていった。
胸の鼓動をかき消すように。





Fin








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