「ハル、火貸せ」

『ん、ちょっと待ってね』


そう返事をしてショルダーバッグの中を探る。
その際に俯いたせいで耳に掛けていた柔い髪がサラサラと零れていく。
自身も煙草を咥えている為、髪の毛が燃えないよう1度ライターを探すのをやめて、髪を耳に掛け直す。

その流れを黙って見てたグリムジョーが、こちらに手を伸ばしてきたのが視界に入る。
頭の中に?を浮かべながら、その行動を見守っていると、項を捕まれグイッと引き寄せられる。


『わっ!』

「遅せぇ、こっちでいい。」

『っ!!』


基本待たされることが嫌いな彼が痺れを切らしたのか、私が咥えた煙草の火を、グリムジョーが咥えている煙草へ移した。いわゆるシガーキスと言うやつだ。
私より30cm程背の高い彼は上体を屈め、項に手をそえたまま顔を傾け、まるでキスされる直前のような状態にハルは固まる。


ジジッ

端正な顔立ちが離れて、ふーっと1度大きく煙草を吹かす。
ハルは目の前の男を軽く睨む。
今2人がいるこの場は家の中ではなく、公共の場なのだ。グリムジョーにその気はなくとも、今ので周りからの視線が痛い。
興味本位のそれと、整った顔をしているグリムジョーへの熱い視線と私への羨望の眼差しがハルの中の黒い感情を増幅させていく。

そして、そんな私の感情にすら敏感に察知するグリムジョー。


「ンだよ、いつもの事だろうが」

『…だからって人前でやらないでよ』

「………ハッ、照れてるのか?それとも周りの奴らに妬いてンのか?」

『違うっ!』

「クククッ、その反応じゃ両方ってトコだな。顔赤いぜ?」


口では否定的な事を言っても顔にすぐ出るコイツの事は全てお見通しだとでも言わんばかりの顔をするグリムジョー。

顔が赤いと言われ、咄嗟に彼から背けるがすぐに後悔する。まるでその羞恥を自分で認めてるようなものだからだ。
1度深く息を吸い、手に持つ煙草を吹かして落ち着かそうとする。

何度か煙草を吹かして漸く落ち着いたその時、
グイッと腰を力強く引かれ、ぐるりとグリムジョーの正面を向かされる。突然の出来事に驚くが、グリムジョーに煙草が当たらないように咄嗟に手を動かす。


『バカ!煙草持ってるのに!』

「バカはどっちだ。俺が煙草如きでヤケドなんざすると本気で思ってんのか」

『それは…』

「あんま可愛い反応見せ付けんなよ、ハル」

『は?』

「今すぐ喰いたくなるだろうが」

『ちょ、待っ』


ガブ

噛み付かれるようなキスをされ、口内にグリムジョーの煙草の味がひろがっていく。
何処でそっちのスイッチが入ったのか全く理解不能だったが、グリムジョーへ向けられていた熱い視線が、小さな悲鳴になれば、ハルの中の黒い感情は溶けて無くなり、目の前の男へ身を任す。
グリムジョーは煙草の火が消えるまで、離してくれなかった。



(「…甘ぇ」)

(『ふふ、私のはイチゴ味だったからね』)














ーーーーー
煙草を咥えたハルが、髪に耳をかけた時の表情がめちゃくちゃエロかったけど、お互い煙草咥えてるのでキス出来ないからシガーキスしちゃうグリムジョー。
周りからの視線の中にはハルへ向けたものもあり、周りに妬いたのはグリムジョーも一緒で、俺のモノって事を見せ付けるために結局濃厚なキスしちゃうっていう、そんな妄想。





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