初めて、幸村くんの試合を見た時の恐怖感と驚き。
大会へ向けての厳しい練習。
学校生活の思い出。
サプライズの誕生日パーティー。

仁王との出会い。
告白して、フラれた時のショック。
でも、仁王から告白してきてくれた時の嬉しさ。
あの時、仁王も俺のこと好きで自分から告白するって決めてたから
俺が告白したとき断られたんだっけな…。

仁王と組んだダブルス。
居残り練習…。

中学時代の思い出しか出てこない。
ふと気づけば涙で前がぼやけて見えない。

「…。会いたい…。会いたい…。会いたいよ、仁王…っ!!」

なんどもなんども、愛しい人の名前を呼ぶ。
しかし、仁王にこの声が届くハズがない。
連絡も取れなくなった今じゃ昔のように
毎日声を聞くことすら出来ない。

「どこいるんだよ…。俺の…、俺の前に一瞬でも…っ!」








「ブン太…。」



「っ!!」

聞こえるハズもない声が聞こえた。

振り返るとそこには、中学時代と変わらない、白髪で目付きの悪い整った顔。

こんな偶然なことが起きるはずがない。
一度瞬きしてしまえば仁王の姿なんてどこにもなくなってしまう。


瞬きしたくない。
幻でもいいからもう一度。
もう一度でいいから、名前をよんで貰いたい。


しかし、風が吹いてきて乾燥した俺の瞳は
瞬きをしてしまった。


あぁ、もう仁王は居なくなてしまった。
分かっているのにまだ居るんじゃないかという
期待がこみ上げてきて目を開けた。

でも、開けて後悔した。
やはり、さっきの仁王は幻だったんだ。
俺の脳が見せた幻覚。



俺は、頬に伝っていた涙を拭い、
手から滑り落ちてしまっていたラケットを手に取る。


そして、もう壁打ちどころじゃないと
脳が命令したのか、近くに置いてある
ラケットバックへ足を踏み出させた。


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