次の日から、俺は仁王に気持ちがバレんのが嫌で近づかなくなってしまった。
仁王は俺に話しかけてくれるけど、
俺がぎこちない態度とって微妙な隙間が出来ちまった。
部活では大会が近づくにつれだんだんハードになって、休憩時間には地べたに座り込むくらい。
帰りも仁王とは電車は一緒でも駅でたら真逆だし。ずっと一緒なのはジャッカルだけ。
でも、ジャッカルじゃ意味ない。
「はぁ…」
「どうしたんスか?丸井さん?」
いきなり俺の真横に現れた1年の赤也。
「うぉっ!!ビビッた。」
俺が驚くと赤也は酷いっス〜とか言ってた。
「ってか、急になんだよぃ?」
赤也とは割と一緒に居る時間が多い。
「あの、今日一緒に帰りません?」
「別にいいけど。ってか早く着替えろ。
今日の鍵締め当番、幸村くんだし。」
赤也はものすごい顔して部室に入って行った。
俺が部室前のベンチに座ってると
着替えを済ませた赤也が戻ってきた。
「よし!帰りやしょう!!」
赤也はそう言って俺の数歩先を歩く。
これが仁王だったらどれだけ嬉しいか…。
考え事しながら赤也の話を聞き流していると
電車が一緒だった事に気づいた。
「…丸井さん?」
呼びかけられ、ふと赤也の方を向く。
「あ、あの…どうしたら丸井さんみたいにモテるようになるんスかぁ!!?」
「……知らね。ってか、俺より幸村くんとか
柳とかのほうがモテるだろぃ」
いきなり妙なこと言い出すからなんて返せばいいかわかんなくなった。
「いや、クラスの女子が丸井さんの事かっこいいって言ってたから…」
まじか…。俺よりかっこいい奴いっぱいいんのに。
「たぶんそれ、俺の隣にジャッカルが居るからかっこよく見えんだよ。」
あ、今サラっとナルシスト発言。
「そうすかねー?ってか丸井さん
好きな人居ないんスかー??」
「はぁっ!!//い…いるわけねーだろぃ!?//」
やべ、急だったから顔赤い!!
「なんだーいないいんスかー。
っあ!!俺ここで降りるんで!!お先っス!!」
タタタ...
「な、なんだよぃ。赤也の奴!!」
赤也と一緒に帰った日以来、
俺は週に1回は赤也に同じ質問された。
そのせいで、ジャッカルに集中しろっとか言われて小突かれてしまった。
そして夏になり、俺ら立海は昨年と同様、全国No.1になった。
夏休みの練習中、ふと仁王に視線をやれば
柳生と談笑してるとこが目に付く。
俺も…。あんな風に喋りてぇ…。
そんなこと思ってみるが、自らつくりあげた
高い高い壁の急いで、手が声が、届かない。
直接話すのが無理ならメールならと
試してみるが、内容が思い付かない。
そして暑い夏も終わりが近づき
2学期が始まった。
ある日、トイレから出てくると
前から仁王と柳生が話してくるのが見えた。
あー。イラつく。なんだよぃ。
俺は進行方向をぐるりと変えて裏庭に向かう。
「あーあ。どうしたら仁王と喋れるよーになんだかね!!」
一人でつぶやくと裏庭で唯一日当たりのいい草影にねっころがる。