「うう、寒い」
「そんなにスカートを折るからだ」
横で喋りながら唇を震わせているゆいに苦笑いを浮かべて、そう言った。洩れた白い息が薄暗い世界に浮かんで、元から無かったように消えた。
部活を終えて帰る頃、外はひゅうひゅうという音を立てて冷たい風が何度となく吹きつけた。俺の身体は部活をし終えた頃の熱を殆ど失って、頬は外の寒さで切られたように熱く感じた。
ゆいは俺の指摘を受けると態とらしい不満そうな声色で反論した。
「何、私がスカートをソックスと繋げていても良いって言うの」
「(それは、…嫌だな)」
笑わないでいる自信がない。
制服で決められているとはいえ冬の女子のスカート姿は見ていてこちらも寒くなる。ましてゆいの、教師に対抗するかのような挑発的な丈なら尚更そうだ。俺にはよく分からないが、ゆい曰く、お洒落というものは我慢と涙ぐましい努力から生まれる、らしかった。俺なら、暖かさを取るが。
しかし横でぶるぶると必死に体温を保とうと震えているゆいを見ていると何だか可哀想になってきた。どちらかというと庇護欲に近いかもしれない。何か出来ないだろうか、と考えた。
「そうだ」
ピンときたアイデアに俺の口許が弛んだ。
「え、何…」
俺は疑問を投げかけるゆいを敢えて無視してゆいの背後に行き、自分のマントの穴にゆいの頭をすっぽり通し、抱き締めた。
「これなら暖かいだろう」
背後から耳元でそう囁やくと、俺の腕の中の可愛い恋人は急に大人しくなって、ゆっくり小さく頷いた。
可愛いやつめ。
(…でも動けないね)(…そうだな)
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鬼道さんのマントに包まれたい