秋の木枯らしが吹く日、二人は小さなシングルベッドに小鳥が寄り添うように近く近く身を寄せ合い、直に人肌の温もりを感じていた。肌同士が触れ合って生まれる温もりは不思議と普段服を着ているよりも温かく感じた。

「あったかいね」

「そうですね」

私は博之の腕枕に頭を預け、彼の胸に指を這わせた。
彼の薄い肉体には無駄なものが何もなく、あるのは程良い筋肉と身体を支える骨などの最低限のものだけだということが指先の感覚を通して伝わってきた。
触ると分かる肋骨の隙間に指をなぞらせた。博之は細くて本当にご飯を食べているのかな、と少し不安に思いながらそれを続けていると、博之は胸を這う私の指を掴み、ゆっくりと指を絡めてきた。

「?」
「…少し、くすぐったいです」
「ああ」

博之は普段布一枚の下にある彼の隠された両の眼に少しだけわざとらしく困ったような色を浮かべて微笑んだ。普段は余裕な口許しか見せない彼だが、今日は何の遮りもなく表情を見据えることができた。
彼の、この隠された素顔を一体どれほどの人が見たことがあるだろうか。
そんなことをぼうっと考えていると、隣にいる彼がもぞもぞと動き出した。私は黙ってその姿を目で追っていると博之はゆっくりと私の頭の下から腕枕を引き抜き、私の上に跨って、静かに私の胸に顔を埋めた。
彼の鼻が私の谷間と擦れ合い、そこから漏れる息が私の膚を撫でた。博之の息が私の肌を撫でる度、私は胸の奥底できゅう、と何かに締め付けられるような感覚がした。私の胸の上で安らぐ博之の姿は私にはまるで母に縋る幼子のように感じられた。これも普段の姿とは違う、私の前だけで見せる彼の姿だった。
私は静かに息をしている博之を優しく抱き締めた。それから頭を繰り返し繰り返し撫でてやった。博之は気持ちよさそうに目を瞑っていた。博之を見ると彼の長い睫毛が目に入った。綺麗だ。私は自然とそう感じた。
ずっとこうしていたい。彼も今私と同じことを考えているようだった。今、私は聞かなくても彼の考えていることが手に取るようにわかった。そしてそれは彼も同じことのようだった。
それは身体の繋がりよりも、まるで二人が一つになったようで、私たちはとても心地良く感じていた。
木枯らしがびゅうびゅうと吹き抜ける音が静かな室内に響き渡る。耳を澄ませば、からんからんと軽い音を響かせながら何かが飛ばされている音も聞こえた。もっと遠くではガタンガタンという音を立てながら電車が通っていく音も聞こえた。

「博之、外では色んな音がしてるね」
「部屋の中でだって色んな音はしていますよ」

少しの間、眼を瞑っていたら色々と聞こえました。博之は顔を上げ、私の目を見た。そして私の頬を優しく撫でた。博之の澄んだ眼に私の顔と白い肩が映っていた。

「例えば?」
「時計の秒針の音、シーツが擦れる音だったり、肌が擦れ合う音。
あとは、ゆいの心音」
「…私の心音?
どうだった?」
「少し、速めでしたね」

博之がそう言って、二人でくすりと笑い合った。

「まあこれからもう少しだけ速くなりますけど」

ゆいの肌も少し冷たくなってきたところですし。まあ、最も、僕がずっとゆいに甘えて何もせずにいたせいなのですが。私の指先に博之は指を絡めて、やっぱり冷たくなってしまっている、と申し訳無さそうに苦笑した。


「優しくして」


「勿論」


そう言って博之は私の前髪を甲で払うなり、額に口付けを落とした。
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