‐09'10.13



*佐久間夢


少し前から、佐久間がじいっと私の顔を見つめていた。

「…おい、睫毛、落ちてるぞ。」

…何だ、そのせいか。
ちょっとドキドキしちゃったのに。

「えっ…」

「ほら、取ってやるから、目、瞑ってろ。」

佐久間がもう手を伸ばし始めていたので、私は大人しく目を瞑った。

「…佐久間、取れ、た…」

目を開けようとした瞬間、佐久間の方に重力が働いた。

唇に温かい感触がする。


「お礼、貰っとくよ。」

そう言って、佐久間は悪戯っ子のような憎めない笑みを浮かべた。



(あげるってまだ言ってないのに!)
(じゃあ、返そうか?)
(いいっ!!)







*源田夢


「…いいか」
「うん…いいよ、幸次郎」
目を瞑った彼女。
言葉とは裏腹に固い握りこぶしを作っていて、首を竦めている。
それが可愛くて、愛しくて思わず微笑みを浮かべてしまう。

「…身体、強張ってるぞ。
もう少し力を抜け。」

「う、うん」

「じゃあ、いれるぞ
……どうだ? ここら辺か?」

「…うん、気持ちい、いよ…
あ、そこ、そこ…っ」


「……お前ら、部室で何やってんだよ…」


声のした方を見ると苦笑い、というより呆れた顔をした佐久間が立っていた。


「? …耳掘りだが?」


(部室でいちゃつくなよな、バカップル…)
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