秋晴れ。
雲一つ無い空はとても綺麗な青をしている。

体育祭も終盤。
始まってみればあっという間だった。
同じブロックの源田くんと成神くんはこれから騎馬戦だ。
出番がもうすぐな二人は上着を脱いでいた。
いつもは見えない部分の筋肉が見える。源田くんは想像するまでもなかったけど、成神くんも程良く腹筋が割れていた。
まだ競技前だと言うのに既に女子の黄色い声援が二人に向かって所々から飛んでいる。

全く、二人とも人気者だ。

確かに二人とも背は高いし、運動神経は抜群で、何より格好いい。女子がこうなるのは必然というより他無い気がする。

「ゆい!」
「ゆいセンパイ!」

ぼおっと周りを見ていると二人が元気良く私のことを呼んだ。そして手を振る彼ら。そんなに大きな声で私の名前を呼ばないで!
女子というほど可愛いものではない、そう、女の視線が全身に突き刺さるのを痛いくらい感じた。

よく見ると二人の周りにいる騎馬戦に参加する男子の身体には油性ペンやポスターカラーの落書きが見えた。
本当に落書きだった。クラスのいつもふざけている男子のお腹には人の顔がわざと気持ち悪く描かれていた。他にも中学生らしい低俗な文字列が見えた。
普段は規律が全てを支配する帝国学園といえど、こういったところで若い混沌が爆発する。
総帥が見たらなんと思われるだろう、なんて考えたけれど総帥自体がこんな混沌に現れるはずもなく、今、私たちを縛るものは何もなかった。

二人はどんな落書きをしているのだろう。

微かに私の中に興味が湧く。

でもどうせ他の男子みたいにしょうもないことを書いているんだろうなあ、と考えて苦笑した。

『…プログラム13番、騎馬戦
出場する選手はブロック席前からグラウンドに入場してください』

行くぞー! と三年の先輩が叫ぶ声が聞こえた。続いて雄叫びがグラウンドに響き渡る。

源田くんは騎馬で、成神くんは騎手だろう、私はそう思っていた。
しかし、予想は外れた。成神くんは騎馬の一員になり、源田くんが乗る。

重たそうだった。はじめのうちは少し、よろよろとしていた。見ているこっちが気が気じゃない。
…源田くんが上なのは、そういう作戦なのかな。(源田くん、腕っ節強いし)

戦いの体制が整った。

ふと、私の居る席から源田くんの逞しい背中が見えた。
源田くんの背中には赤色の力強い線で、はっきりと文字が書かれているのが見える。



ゆい、付き合おう!




えっ…

どきり、と心臓が跳ねる。

成神くんの背中も見えた。源田くんと同じ様に赤色の力強い線で文字が書かれていた。


一位だったら二人はキス!



なんだって!
と声に出しかけた瞬間、ピストルが競技開始の合図を告げた。



始まったばかりの競技。

結果は

晴天に浮かぶ太陽のみぞ知る
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