仲間が、一人いなくなる。
それは、どんなに埋めようとしても決して埋まらない穴を生むものだ。
まして、それが恋人であれば悲しみはより深く、まるでそれは自分の半身を奪われたかのように感じるはずだ。

源田、お前は今、何を考え、何を感じているのか。

独りで立ち尽くす源田の後ろ姿は、どこか寂しいように感じられた。

その隣にいつも寄り添っていた彼女の姿を思い浮かべ、連鎖するように太陽のようであった彼女の笑顔を思い出すと、目頭が熱くなっていくのを止めることはできなかった。


「ゆいは、帰ってくるから」




「…ああ、いつか…っ、
また、必ず、…会える…きっと…」





「…鬼道、
どうして泣いているんだ?」



思いも寄らぬ一言に俺は一瞬時が止まったような気がした。

その声に俺が想像していたような悲愴は無く、寧ろどこか喜びすら感じられた。

違和感。

振り返った彼の笑顔は満ち足りていて、思わず戦慄が走る程だった。

嬉しくて話さずにはいられないという様子で、呆然とする俺をよそに源田は話を続けた。

「ゆいはもうすぐ復活するんだ、キリストみたいに。
俺たちの目の前に現れる。」

「源田…」


…悲しいことだが、どんなに待っても、祈っても、願っても、死んだ人間は生き返らないんだ…


そう頭の中で呟くと、ふと亡くなった自分の両親のこと、両親を一度に失い悲しんでいた小さな妹、悲しみに耐えるかつての自分の姿が思い出され、軽く拳を握った。

源田はまだ、受け入れられていないんだ、事実を。無論、俺だって、まだまだ受け入れられるものではない。


人は死んでも、すぐには消えない。
同じ時を過ごした人々がその人を忘れない限り彼がこの世界にいたという事実は残り続ける。
ゆっくりと川の流れが岸を侵食していくように人々の中から彼の記憶を薄らがせていき、ようやく本当の死を迎える。

まだまだこの世界と彼女の結びつきは強い。
だから、実体は無いもののまだ彼女はこの世界に存在している。

でも、生き返るということは、何があろうとも変わることのない世界の法則に因り、有り得る筈のないことだった。


源田が微笑んでこちらを見つめていた。
現実に捕らわれている俺を高みから見下ろしているのか。
不愉快な気持ちになったが、すぐにその焦点が俺ではなく、俺の背後に結ばれているということに気がついた。


まさか。


背後に振り返った俺は見た。



…有り得ない。



ゆいは、絶句する俺を嘲笑うかのように柔らかく生気に満ちた微笑みを浮かべた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -