私の髪の毛がふよふよと水中に踊っている。
ああ、沈んでるなあ。
計画実行
息が苦しい。
でもダイゴが抱き締めてくれてる。
海水が冷たいから、その分ダイゴの温かさが感じられる。
まだ、生きてる。
私の口からごぼ、と空気が溢れた。代わりに海水が体の中に流れ込んできた。
しょっぱいなあ、なんて呑気に思った。
もう、戻れないんだもん。
だから、ね、辛いこと考えちゃ、勿体ないよね。そうでしょう? ダイゴ。
・・・
「お父さん、許してくれなかった。」
僕の腕の中でゆいはぽつりとそう言った。そのうち感情が高ぶっていろいろな思いが駆け巡ったのだろう、ゆいは静かに泣き始めた。
「何で、好きな人と一緒にいちゃいけないの?」
「ゆい…」
何故愛し合っている者同士が寄り添い続けることを許されないのか。僕たちが一体何の罪を犯したのだろうか。
わからない。
ただ、このぬくもりを手放すことは、もう僕にはできないと思った。
離したくない。離れたくない。
「やだ、ダイゴと離れたくない。」
ああ、ゆいも僕と同じ気持ちだ。やはり僕たちは愛し合っているんだ。それを誰がとやかく言えよう。例えその親であったとしても。僕らを引き離すことなんて、馬鹿げている。
僕は、こうするしかないと思う案をゆいに言った。
「一緒に遠いところへ行こう。誰ももう僕たちを引き裂けない、捕まえることもできない、そんな所に。」
そう言うと、一瞬の静寂。少し間を置いてゆいが聞き返した。
「…そんな場所があるの?」
「あるかは、分からないけど。まだ僕もいったことが無いから。」
「じゃあ、駄目じゃない…」
「でも、誰も二人を追いかけてこれないよ。」
追いかけてこられるはずが無い。まして引き裂くことなど、出来る訳が無い。
「……一緒に居られるの?」
ゆいは僕の目を見た。不安そうに。
「うん。」
僕は、強くそう言い切った。
「ただ、それはゆいに苦しい思いをさせてしまうかもしれない方法なんだ。」
僕は抱きしめていた腕を解き、ゆいの両肩を手で掴んで、そう説明した。それだけが心配だった。
もし、少しでも不安があるなら、ゆいのためにこの計画を白紙に戻すべきだった。
だけれど、そんなことゆいが問題にするはずが無かった。僕がそれを問題にしていないように。
「ダイゴと離れるより苦しいことなんて、無いよ…」
もう、何も言うことはなかった。
僕の意志は固まった。
・・・
「途中で離れてしまわないように、縄で二人の手を結んでおこう。」
ぐるぐると縄を巻いて、強く、何度も縛った。
ゆいもじっと息を呑んでそれを見ていた。
そしてとうとう、結び終えた。
結んだ手の指先を互いに絡めあった。そしてそれを見合った。
いつもこうして手を結んでいたが、今夜は何だか少し神聖に見えた。
「大好きだよ、ダイゴ。」
「うん、僕もゆいのこと愛してる。」
そう互いに言い終えた後、とうとう僕らは楽園への一歩を踏み出した。