「ゆい、一人で眠れるよな?」
 「やだ、雷電と一緒がいい」

合宿所の食堂の空気が、この二人の会話によって瞬時に凍った。
さまざまな常識人の間に雷のような衝撃が走った。中には食べていたうどんの麺を落とす者も居た。騒がしい少年たちの会話が瞬時に止み、状況が理解できずにキョトンとした様子で周りのチームメイトを見回すキャプテンを余所に、食堂の空気は張り詰めた。

 「って言われてもなあ…ほら、ここ合宿所だしよお…」

雷電は頭を掻きながら思わず小声になってそう返したが、ゆいの方は周りの空気を知っていてか、知らずにか、とにかく気になっていないようで相変わらずの声量で会話を続けた。

 「いいじゃん、どうせ一人一部屋で誰とも相部屋じゃないんでしょ?」
 「いやそうなんだけど、そういうことじゃねえよ」
 「何で? いままで寝る時は一緒に寝てたのにどうして駄目なの?」 

ここで耐え切れず鬼道はお茶を吹きだしそうになり、慌てて飲み込んだせいで、今度は気管に入って咳き込むことになってしまい、ゴホゴホと咳き込む音が静かな食堂内に響き渡った。見かねた春奈が慌てて咳き込む兄の傍に近寄り彼の背中をさすっていた。
雷電も普段の様子を晒され、流石に羞恥に耐えかねたのか、顔をどころか耳まで真っ赤にし、小声でこら、と言うとゆいの首に腕を回し、そのままずりずりと引き摺って彼女を食堂から連れ出そうとした。

 「きゃ! 何、雷で…いやあ、助けてキャプテンー」

ゆいは手を空しく振り回しながら、そのまま雷電に連れ出されていった。
彼らが出て行った後も暫くの間、言いようもない気まずさが食堂内に広がっていたが、それは次第に彼らの関係を羨む少年たちのため息に変わっていったのだった。

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