*設定:高校生
026.現実虚無の続き。
「先輩、ずっと前から好きでした。…付き合ってください。」
デンジ先輩とのお付き合いが始まってから一ヶ月。
今までデンジ先輩には彼女さんがいて、私なんか到底近付ける訳も無かった。
けれど、先輩が彼女と別れたって噂で聞いて。どきどきした。
このチャンスを逃したら、私、きっとこれ以上近付けない。
そう思うと、居てもたってもいられなくなって、その噂を聞いたその日に先輩に告白した。
それから一ヶ月。
デンジ先輩との交際は楽しい、とはちょっと悲しいけれど言えない。
最初はすごく楽しかった。今まで、デンジ先輩と手をつないだりできるとは思っていなかったから。でも、段々分かってきた。デンジ先輩は私といるとき、ちっとも楽しそうじゃなくて、いつも遠くを見ている。
そんな先輩を見て、言おうとした言葉を飲み込んだことは何度も。ああ、私の話、聞いてくれていない。
そんな時、私が告白したときのことをいつも思い出す。私の告白の言葉を聞いて、デンジ先輩が言った言葉を。
「……多分俺、君に何もしてあげられない。」
私はその言葉を聞いて、それでも良いです、それでも先輩の傍に居たいんです。そう答えた。
それを聞いてデンジ先輩が、なら、好きにしたらいい。そう言って交際が始まったことを。
だから、私は何もデンジ先輩に言えない。
私を見てって、言えない。
笑ってって、言えない。
私のこと、好きになってなんて言えない。
辛いよ、先輩。