※会話文
「…理想郷ってどんなとこだと思う?」
「(…唐突だな、)桃の木が一杯ある」
「あー桃源郷か、なるほど。
私、桃源郷に行って桃を食べながら横になってテレビ見て、だらだら暮らしたいわ」
「……テレビは、無いと思うがな」
「え…まじ?」
「(はあ…)…俗世から切り離された世界だからな。嫌だろ、理想郷に居るのに内閣の支持率の低迷や、どこかの企業の不祥事を伝えられるなんて」
「確かに
そういうの、煩わしいわ。
でも、一度は行ってみたいなあ、そんな場所。
全てから解放されたい」
「…どこにあるか教えてやろうか」
「…え、知ってんの?」
「まあ任せろ。紙とペンを貸せ…ああ、悪い、…
“Utopia(ユートピア)”の“u”の部分はギリシア語で“無い”を意味して、“topia”の部分が“場所”を意味する。つまり“Utopia(ユートピア)”は、“この世界には存在しない場所”って意味だ。」
「へえ、博識だね
それで?」
「それで、これを次に英語で表現すると、…“no where”。
…でも、これから面白いことが起きる。“no where”の“w”を左にずらしてやると、
…“now here”」
「…『今、ここ』…」
「な、見つかったろ」
理想郷は、俺たちのすぐ傍にあるんだ。だから現実から逃げないでちゃんと生きろよ。
鬼道は微笑んでそういうとゆいの肩を力強く叩いた。