「土方くん!」
「おう、何だ?」
土方くんは私に呼び止められると、半身でこちらを向きました。
これで場は揃いました。
やっとこの時が来ました。いえ、来てしまいました。必然的に私の心拍数は上昇して、息苦しくなりました。もしもの結果を予想すると、とても息が詰まりそうになります。とにかく、落ち着かなくては、深呼吸、深呼吸…
…よし、乙女、突撃して参ります!
「土方くん、す、す、すきでしゅ…っ
!!」
噛んだ。何、すきでしゅって。すきでしゅって…
恥ずかしいし、何だか、…
「うぉ、お、おい、どうしたっ、
な、泣くなよ」
目の前の土方君はあたふたとして、手を空中で居場所なくしていました。
「う…っ、だって…ぇ…噛ん、じゃった…っ…」
「そんなことで泣かなくたって…」
「だって、だって…一生懸命考えたのに…、」
恥ずかしさで一杯で、涙が止まりません。せめてこれくらい完璧にこなせる女でありたかった…、と後悔と悲しみの波が押し寄せて私を飲み込んでいくほどでした。
「…別に、噛もうが噛むまいがそんなことで俺の気持ちは変わんねーよ」
ほら、顔上げろよ、仕方ねーなあ、とぶっきらぼうに土方君は言うと、自分の首にかけていたタオルで私の顔に伝う涙を優しく拭ってくれました。タオルからはほんのりと土方君の匂いがしました。やはり、彼という人は優しいのです。
だから私は、
「やっぱりだいすき、なんです」
自然と、そんな言葉を口にしていました。
彼は私の言葉を聞くと目を細めました。
「…ああ、俺も、だ、ゆい」
そう言い終えると、土方君は横を向き、私は俯いて顔を赤くしていました。嬉しいけれど、恥ずかしい。きっと土方君も同じだったでしょう。ですが、私はある物足りなさを感じていました。それは、
「…土方、くん、その、恥ずかしくても『好き』って言って欲しいです…」
「ば、ばかやろう、
っあ、いや、そういう意味じゃなくて…! ま、待て、泣くな、」
私の様子を見て慌てた土方君は私の耳元にすっと顔を寄せて囁きました。
俺もゆいが好きだ。